スタッフ
監督：ジャック・スターレット
製作：ウェス・ビショップ、ポール・マスランスキー
脚本：リー・フロスト、ウェス・ビショップ
撮影：ロバート・ジェサップ
音楽：レナード・ローゼンマン
キャスト
ロジャー / ピーター・フォンダ
フランク / ウォーレン・オーツ
アリス / ロレッタ・スウィット
ケリー / ララ・パーカー
テイラー保安官 / Ｒ・Ｇ・アームストロング
デルバート / クレイ・タナー
エセル / キャロル・ブロジェット
整備工 / フィル・フーヴァー
銃砲店店主 / ジェームス・Ｎ・ハレル
日本公開： 1975年
製作国： アメリカ サーバー＆マランスキー・プロ作品
配給： 20世紀フォックス
あらすじとコメント
「さすらいのカウボーイ」（1971）同様、ピーター・フォンダとウォーレン・オーツが相棒となって旅をする話。ただし、しみじみとした中で、人間の性がじっくり描かれる西部劇とはティストがまったく異なる、ゾッとするほど怖いサスペンス・スリラー。
アメリカ、テキサスオートバイ工場を共同経営するロジャー（ピーター・フォンダ）とフランク（ウォーレン・オーツ）。
フランクは、3万6千ドルもする新型の豪華キャンピング・カーを購入し、お互いの妻を連れ、四人でコロラドでのスキーを楽しもうと休暇旅行に出掛けた。電子レンジから、シャワー、大きめのベッド・ルームまで付いた全長10メートルもある車両は快適で、全員がワクワクしていた。
そんな一行は、一泊目を寂びれた場所にすることにし、ロジャーとフランクは、積んできたモトクロス・バイクで疾走し、休暇を思う存分楽しむ。だが、その晩、静かに男二人が語り合っていると、暗がりの中に突然、火柱が上がった。
こんな場所で何故、と不思議に思った二人がそっと近付くと、十人程度の謎の集団が、儀式めいたこと始めていた。遠巻きに隠れて見ていると、突然、リーダーのようなマスク姿の男が、全裸の若い女性をナイフで殺害する現場を目撃してしまう。
息が止まりながらも、しっかりと成り行きを見てしまい、これは大変だと目を合わす二人。その時、二人の姿が見えない女性二人が、大声を上げて探しにきてしまう。
当然、儀式の集団に発見されてしまい、一斉に襲撃をかけられて・・・
密教崇拝のカルト集団に執拗に追われる夫婦二組の底なしの恐怖を描く作品。
偶然見てしまった生贄の儀式から、楽しいはずの旅行が一転して、恐怖の連鎖に追い込まれて行く二組の夫婦。
そんな彼らに襲いかかってくる集団が、まるでゾンビのようなイメージであり、只々、直情型で暴力的。
命からがら逃げ延びた一行は、翌朝、地元の警察署に駆け込み、即、実況見分と相成るが、殺されていたのは女性ではなく犬。
そのあたりから、保安官たちにも、妙なイメージが浮かぶ。もしかしたら、密教集団の一員ではないのかと。
それに気付く主人公らだが、旅は続けたいので、とりあえず、この地域から早く移動すれば良いと思う。
ところが、である。行く先々に、どうにも胡散臭い人間たちが次々に登場してきて、もしかしたら、主人公一行以外は、全員が『敵』なのかと、こちらに思わせてくる展開になるのだ。
途中立ち寄るガソリンスタンドやバーから、人が多勢いる大型キャンプ場。そのどこでも、緊張感と恐怖を喚起させてくる演出。
ただ、当初、儀式で殺人を犯すのは、ヒッピーを連想させる若い人間たちだけなのだが、以後、初老の保安官や助手から、ガソリンスタンド店員、果てはキャンプ場の周囲の人々となると、それこそ老若男女であり、どれほどの大きな密教集団なのかと疑問を喚起させる。
場所柄、モデルは「KKK団」だと推察させるが、昨今では中東の過激派イスラム組織を連想してしまうだろうか。
要は、完全アウェーな状況で、出口のない、というか、どこが一体、安全地帯なのかという、絶望にも似た感情をこちらに投げかけてくる。
主人公一行も、「眼には眼を」とばかり、武装したりするから始末に悪い。
「やられたら、やり返す」という心情や価値観が、ことを悪化させて行くのは想像に難くないし、本当に主人公ら以外が全員『敵』であるのかという疑問符も浮かぶ。
とはいえ、主人公らを拉致、殺害しようとする人間が存在するのは事実なのだから、話はややこしい。
ただ、そんな疑念を感じさせつつも、畳み込むように恐怖が加速して行く進行は面白い。
B級感に溢れているし、ことホラー系の作品は、チープさと、内容のツメの甘さを感じさせる作品が多い。本作も然りなのだが、畳み掛けてくる展開は、かなり怖い。
ホラー系スリラー・アクションとしては上出来の作品。
