スタッフ
監督:ヴィンセント・ミネリ
製作:ハワード・W・コッチ
脚本:アラン・J・ラーナー
撮影:ハリー・ストラドリング
音楽:バートン・レイン
キャスト
ディジー/メリンダ / バーブラ・ストライサンド
シャボー教授 / イヴ・モンタン
ヒューム学長 / ボブ・ニューハート
プラット / ラリー・ブライデン
プリングル / ジャック・ニコルソン
フラー教授 / サイモン・オークランド
テントリース / ジョン・リチャードソン
フィッツハーヴァート夫人 / パメラ・ブラウン
ハッチ婦人 / メイベル・アルバートソン
日本公開: 1971年
製作国: アメリカ コッチ&ラーナー・プロ作品
配給: CIC
あらすじとコメント
引き続き、フランスの伊達男イヴ・モンタン主演作。そんな彼がハリウッドで、当時、人気があったバーブラ・ストライサンドと共演した、何とも奇妙なタッチのミュージカル映画。
アメリカ、ニュー・ヨーク。とある私立大学で心理学を教えるシャボー(イヴ・モンタン)は、講義で学生相手に催眠術の実験をしていた。実験も佳境に差しかかった時、催眠対象ではないディジー(バーブラ・ストライランド)が、突如かかってしまう。不思議に感じるシャポーだが、彼女が受講生でないことを見抜き、教室から追いだしてしまう。
講義終了後、外で待っていたディジーは、自分はヘビー・スモーカーで、どうしても明日の晩までに禁煙したいから、催眠術で何とかならないかと捲し立てた。驚く彼だが、突如、自分が失念していたメモの場所をピタリと当ててしまった事から、彼女には何らかの特殊能力があるのではないかと感じる。
しかし、心理学の教授としては、そんな非論理的なことなど信じる訳にも行かない。それでも、続いて電話が鳴ることを予言し、的中させる。どうにも興味を惹かれたシャボーは、禁煙のための催眠治療をするから、夕方自宅に来るように命じた。
そして、自宅に来た彼女に催眠術をかけたところ・・・
輪廻転生をメインに繰り広げられるファンタジー性の強い不思議なミュージカル。
就職する婚約者のために、どうしても禁煙したいと願う、何の変哲もない若い女性。ただし、それは自身がそう思っているだけで、予知能力を含む、超能力を持っている。
そこに論理的思考や検証によってでしか、事実として認めないという心理学者が絡む。
まるで、一時期、日本でも多少話題になった元TVプロデューサーと早稲田大学の物理学教授の対峙とも受け取れる内容。
要は見えないものを信じるかどうか、という主軸に恋愛が絡むという内容。
元は、1965年初演のブロードウェイのミュージカル劇。この年代は舞台を映画化したミュージカル大作が続々と制作されていた時期。
口火を切った作品は「ウエストサイド物語」(1961)だが、「サウンド・オブ・ミュージック」(1964)、「マイ・フェア・レディ」(1964)と『超大作』として日本でも大ヒットしていた。
一時期よりは鎮静化していたものの、それでも本作はその流れと呼べる作品。
確かに実証主義的発想の人間からすれば、証明できないものは認知しないし、更には、現代でも科学的には解明されていない、「霊感」という類は、『洗脳』や『霊感商法』といったネガティヴな感覚で捉えられている部分もある。
しかし、ミュージカルである。これも突如、町なかで人間が歌って踊りだすことなど、あり得ないという超日常を前提にしている世界だ。
要は、その日常ではあり得ないことをファンタジーとして融合させたのだ。そういう観点からみると、それなりに面白いかもしれない。
どちらかというと、踊りよりは音楽に重きを置いている作品であり、ヒロインが19世紀のイギリス女性の生まれ変わりであるので、夢と現実の中で、コスチューム・プレイ的要素の強い19世紀と、サイケ調の衣装が流行している現代がシンクロするという進行。
ヒロインには終身雇用こそ安全と考える婚約者と、ヒッピー気取りの義兄という同年代の男性との間で揺れ動きつつ、フランス中年色男に恋心を抱くという恋愛劇が繰り広げられるが、何も考えずにファンタジーとして見られるかどうかが、分かれ目だろう。
何と言っても、いかにもフレンチ・イングリッシュを話して歌う、粋で洒落てる伊達男モンタンの存在が群を抜いている。
当時、本作前に一挙にスターダムに伸し上がっていたストライサンドも、はちきれんばかりの熱演である。
しかし、へそ曲がりな自分としては、「ウエストサイド物語」にも出演し、本作でも主人公の学者仲間を演じているサイモン・オークランドに笑ってしまった。何せ、ミュージカルなのに、一切、歌も踊りも披露しない、ドラマ部門のみでの出演なのだから。
更に言えば、義兄役も売れ始めていたジャック・ニコルソンであるが、彼も楽器演奏はするものの、一切、歌も踊りも披露しない。そういった出演の仕方も、全編を通して歌って踊る、単純なミュージカルではないから当然なのだろうか。
しかし、その視点から考えると、どうにも中途半端な印象が残る。ただし、楽曲は素晴らしい。