スタッフ
監督:リチャード・クワイン
製作:R・クワイン、カーク・ダグラス
脚本:エヴァン・ハンター
撮影:チャールス・ラング Jr
音楽:ジョージ・ダニング
キャスト
コー / カーク・ダグラス
マーガレット / キム・ノヴァク
アルター / アーニー・コヴァックス
イヴ / バーバラ・ラッシュ
アンダース / ウォルター・マッソー
ワグナー夫人 / ヴァージニア・ブルウス
バクスター / ケント・スミス
ゴールド / ジョン・ブライアント
リンダ / ロバータ・ショア
日本公開: 1960年
製作国: アメリカ ブライナ&クワイン・プロ作品
配給: コロンビア
あらすじとコメント
前回のヒロイン、キム・ノヴァクと共演者アー二ー・コヴァックス。そして監督リチャード・クワインも同じ。熱情的な田舎娘から、妖艶な都会派という役どころまでこなすノヴァク。どこかセックス・シンボル的イメージも強い彼女が出演した不倫ドラマにしてみた。
アメリカ、カリフォルニア。閑静な住宅街に住む建築家のコー(カーク・ダグラス)は、ある朝、息子を送迎してくれるスクールバス乗り場で、やはり子供を見送りに来るマーガレット(キム・ノヴァク)を見かけた。短い金髪に鼻筋が通り、セクシーな雰囲気を醸しだす彼女に、一瞬にして惹かれた。
それから毎朝、彼は息子をバス乗り場に送るようになった。募る思いが押さえきれなくなり、ある日、コーは彼女をドライブに誘った。行き先は、町から離れた太平洋を見渡せる高台にある、ベストセラー作家アルター(アーニー・コヴァックス)の新宅予定地。コーは、そこの建築を手がけているからだ。驚き、躊躇するマーガレットだが、コーのスマートさとシャイさ加減に頷いてしまう。
予定地は素晴らしく感動するマーガレット。更に、恋心が募ったコーは、今度は町から離れた場所で、夜に会おうと誘った。いけない、と思いつつ抗しきれないマーガレット。
当日、コーは妻に、仕事相手と会うと自宅をでる。一方、マーガレットは、その日に限って自宅で仕事をする亭主を前にして・・・
互いに家族持ちの男女が繰り広げる甘美さと切なさが入り混じる典型的な不倫メロドラマ。
独創的な設計で人気を博す二枚目の建築家。妻は家庭的ではあるが、自分の意見をハッキリというタイプ。
方や、ヒロインは美人なのだが、事業に掛かりきりで、自分をまったく顧みない夫にフラストレーションが溜まっている。しかも、母親は奔放な性格で、子供時代にないがしろにされた経験から、初めての相手と結婚していたという設定。
どうにもすべてが貞淑な妻が理性で大人としての対応しようと心掛けるが、結局、本能が勝ってしまう、ということに持って行きたい男性サイドからの理想が見えた。
しかし、それは個人差というよりも、時代性かもしれない。あくまで『平等』といいながら、『肉食系男性』からの視点。確かに、作られた時代を考えれば、制作側からの『理解ある上の人間』的<発想と視点というイメージが勝ってしまったのは、仕方ないだろうか。
それを如何に、納得というか、感情移入しやすいと思わせるのか。
美しい画面、甘い音楽、そして美男美女。折角、実力のある立場の建築家なのに、恋愛モードにスイッチが入ると、理性的でいられなくなる。
中には、自分だったら、もっと上手く処世すると思う男性が、当時は多かったのだろうか。
方や、人妻サイドも、母親の嫌な遺伝子を受け継いだと呪いながら、どう対応しようとするのか。
見ている側は、どの落とし所に持って行くのか、と推測する。まさか、お互いが家族を棄てて一緒になるなどというラストは誰も想像しないだろうから、何が切っ掛けとなり、決定打となるのかと思いを張り巡らせる。
本来であれば、それぞれの子供ではないかと思ったが、さにあらず。
特に人妻側には、伝家の宝刀だと思っていたが、それでは、ありきたり過ぎて鼻白むと考えていた。
そこで鍵を握るのが、大好きな俳優のひとり、ウォルター・マッソーである。冒頭に少しだけでて来て、印象が弱いと思っていると、終盤、流石のマッソーと思わせる演技で、恐れ入った。
何ともヤラしくて上手いのだ。確かに、当時のマッソーはコメディ俳優というよりも、非常にアクの強い別な顔が勝っていた。本作でも彼が素顔を見せる、その瞬間から、主人公二人よりも印象が強くなった。
「不倫」とは、切ないから美しいのか。大人である当の本人たちにしか感じ、通じ合えないからこそ燃えるのか。
それにしても、子供は可哀相だと感じ、これじゃ、年代と共に離婚率なり未婚率は上昇するだろうなと、妙な気分に陥った。