スタッフ
監督:ジョン・ヒューストン
製作:エドワード・ルイス
脚本:アンソニー・ヴェイラー
撮影:ジョー・マクドナルド
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
キャスト
ゲスリン / ジョージ・C・スコット
ジョスリン / ダナ・ウィンター
グレネア侯爵 / クライヴ・ブルック
ルーカス卿 / ハーバート・マーシャル
ボーグ / ジャック・ルー
パイク警部 / バーナード・アーチャード
カロージャン夫人 / グラディス・クーパー
メッセンジャー / ジョン・マリヴェル
ラウズ / カーク・ダグラス
日本公開: 1963年
製作国: アメリカ ジョエル・プロ作品
配給: ユニバーサル
あらすじとコメント
前回の「天地創造」(1966)のコンビ、ジョージ・C・スコットとジョン・ヒューストンが、それ以前に制作したものを選んでみた。ところが主役のスコットよりも、カメオ出演的大スターばかりが取り沙汰された異色作。
イギリス、ロンドン。とあるマンションのエレベーター落下事故で、ひとりの男が死んだ。ロンドン警視庁は、単純に事故死としたが、たったひとりメッセンジャーという作家だけがその事故に注目していた。この数年、彼の知り合いが次々と事故死していたからだ。偶然と呼ぶには度が過ぎている。
そんな彼は名門グレネヤー侯爵(クライヴ・ブルック)家の親類であり、丁度、侯爵の館を訪ねた折、侯爵、亡き息子の未亡人ジョスリン(ダナ・ウィンター)と孫、そして元イギリス諜報部の腕利き調査員であったゲスリン(ジョージ・C・スコット)がいたのを良いことにその不可思議な偶然の話をした。そして、10名の名前と住所が記されたメモをゲスリンに渡し、彼らの動向を探ってくれないかと依頼した。
情報部から引退し、悠々自適の生活を始めていたゲスリンは、イギリス全土に拡がる名前の主たちを見て、時間がかかるぞと答えた。「兎に角、頼む。自分は明日から二週間アメリカに行くが、帰国時には意外な結果がでてるかもな」と笑ったが、それ以上のことは言わなかった。
翌日、メッセンジャーを乗せたアメリカ行きの飛行機が爆発事故を起こした・・・
謎の連続殺人を奇妙なタッチで描くミステリー作品。
冒頭、紳士然とした老人がマンションを見上げ、周囲に人がいないことを確認すると、いきなり、素早く機敏な動作で建物に侵入し、エレベーターに仕掛けをする。
つまり、用意周到に特殊変装メイクを施した男だと教えるプロローグである。
とは言え、制作年代を考えれば、現在ほどメイク術は発達しておらず、その男を誰が演じているのかは、映画ファンなら容易に想像が付く。
先ず、ここで、本作に乗れるか否かの試金石となるかもしれない。
映画は、死んだ作家のメモを頼りに、主役、ロンドン警視庁、そして飛行機事故でたったひとり生き残り、死ぬ直前の作家の呟きを聞いたフランス人が絡んでの調査となる。
その間に、冒頭に登場した犯人が、何度も手を変え品を変えの変装で登場し、都度、殺人を重ねていくのが並行して描かれる進行である。
当然、常に犯人が一歩リードし、捜査陣が後手後手に回るのは想像に難くないだろう。ただし、メモに記された人間が二名を残し、既に死亡していたと捜査側がやっと知ったり、フランス人の話す英語の発音により、捜査が混乱したりと、どうにも進行はありきたり。
ストーリィも弱いし、どんでん返しがある訳でもない。ヒュ─ストン演出も冴えがなく、個人的には妙に乗り切れなかった。
監督自身も、同じような感覚だったのか、物語の以外性や筋運びよりも、ヘンな遊び心に逃避したとも感じる。
それは、『変装』である。犯人は劇中、5回も違った姿で登場するのだが、体型や所作で、どう見ても同じ人間と解ってしまうあたり、演じている俳優には申し訳ないが、決して名優の類ではないとも感じた。
それに、完全に遊んだ、と監督自身の嬉々としている顔が浮かぶのが、豪華な大スターたちの変装姿である。カーク・ダグラス、トニー・カーティス、フランク・シナトラ、バート・ランカスター、ロバート・ミッチャム。錚々たるスターたちによるカメオ出演。
その中でも、バート・ランカスターの変装は見事だった。唯一、誰か解らないほどの変装で名演。
ただ、本作をTVでの吹替え版で見たときには、当時、ランカスターのフィックス声優であった久松保夫の声で解ってしまったのが、残念。
ここで扱うので、字幕ナシのLDで再見したが、オリジナル音声では、声質まで変えて、流石のランカスターと恐れ入った。
ただし、面白いのは、そこいら辺りだけというのが寂しい気もするのだが。