スタッフ
監督:アーサー・ヒラー
製作:エドワード・K・ミルキス、トーマス・L・ミラー
脚本:コリン・ヒギンズ
撮影:デヴィッド・M・ウオルシュ
音楽:ヘンリー・マンシーニ
キャスト
コールドウェル / ジーン・ワイルダー
ヒリー / ジル・クレイバーグ
モルドゥーン / リチャード・プライヤー
デヴロー / パトリック・マクグーハン
スィート / ネッド・ビーティ
チョンシー保安官 / クリフトン・ジェームス
ホワイニー / レイ・ウォルストン
リース / リチャード・キール
ジェーン / ヴァレリー・カーティン
日本公開: 1977年
製作国: アメリカ 20世紀フォックス作品
配給: 20世紀フォックス
あらすじとコメント
今回もある意味で、パニック映画として製作された作品。しかし、ベースはコメディであり、中々、双方のバランスの妙味を感じさせる好篇。
アメリカ、ロサンジェルス。シカゴまで二日半をかけて大陸を横断する「シルヴァー・ストリーク号」。出版業者のコールドウェル(ジーン・ワイルダー)が、シカゴでの妹の結婚式に出席するために乗り込んだ。飛行機が嫌いなわけではなく、俗世と離れてゆっくりしたいと思っていたからだ。
彼の個室は一等車であったが、隣室を繋ぐドア錠が壊れていて、偶然、着替え中のヒリー(ジル・クレイバーグ)と対面してしまう。気まずさを感じながら、ドアを閉めるコールドウェル。
夕方、食堂車へ行くと彼女と再会。照れ隠しするが、同席を求めて来るヒリー。何やら彼女の方が積極的で、シャンパンを頼み、部屋に戻る二人。そうなれば、お決まりのコースだ。良い雰囲気になったところで、車窓の外に突然、頭を撃ち抜かれた男性の死体がぶら下がった。驚くコールドウェル。だが、直接見てないヒリーは信用しない。
翌朝、昨日の夜に列車から転落した男性が、彼女が秘書を務める17世紀の画家レンブラント研究の権威シュライナー博士と知って・・・
列車を舞台にしたアメリカ製娯楽アクション・スリラーの佳作。
列車で起きる失踪事件。まさにヒッチコックが渡米前に英国で撮った傑作「バルカン超特急」(1938)にインスパイアされた作品。
それをアメリカに置換し、いかにもアメリカらしい、ある意味、ノー天気さを加味し、充分に愉しませてくれる作品に仕上がっている。
しかも、渡米後のヒッチ作品よろしく、「巻込まれ型」の主人公だ。更に、それをひねって、英雄的行動をとるが、どうにもドジという主人公。
イメージとしてはケーリー・グラントだろうが、主役のジーン・ワイルダーもそれを意識しつつ、そこはコメディアン。監督もそれを意識しての進行だ。
何せ、彼は3度も列車から放りだされる。都度、コメディ要素満載で、列車に戻るを繰り返す。理由は、一晩を共にした女性に一目惚れをしたからである。
あり得ないだろうと笑いながらも、本作は、かなり強引な進行を続けていく。しかし、面白い。
更に、ヒッチの「バルカン超特急」で、主役たちを完全に喰ったクリケット好きの英国紳士二人組よろしく、本作にも、更に輪を掛けるサブキャラが続々登場してくる。
誰もが、強烈だ。列車で知り合う女性好きのビタミン剤のセールスマンに始まり、田舎の農場の老婆、田舎町の保安官、車好きのコソ泥など。
その誰もが、当時、脇役で何度も見たことがある役者が演じる愉悦。それでいて悪役側や警察側は、いかにもという感じで描かれ、何とも言えぬバランス感覚で飽きずに見て行ける。
数多く作られてきた列車をモチーフにした映画なり、ヒッチコックに代表されるサスペンス・スリラーを、いかにも『劇映画用の作り物』として展開していく。
旧作から様々な映画を見て来たファン心理をくすぐる要素を散りばめ、細かいリアリティなど無視した大雑把さこそが魅力のアメリカ製娯楽映画というタッチを加味する。
何とも欲張った設定と展開。手に汗握る場面でも、どこか『外し感』があり、そこまでするかというクライマックスに爆走する娯楽映画として上出来の作品。