スタッフ
監督:ビリー・ワイルダー
製作:リーランド・ヘイワード
脚本:B・ワイルダー、ウェンデル・メイズ
撮影:ロバート・バークス
音楽:フランツ・ワックスマン
キャスト
リンドバーグ / ジェームス・スチュワート
ガーニィ / マーレイ・ハミルトン
マホーニー / バートレット・ロビンソン
手鏡の娘 / パトリシア・スミス
ハスマン神父 / マルク・コネリー
ホール / アーサー・スペース
シュルツ / チャールス・ワッツ
ナイト / ロバート・コンウェイ
ランバート / ロバート・バートン
日本公開: 1957年
製作国: アメリカ ヘイワード&ワイルダー・プロ作品
配給: ワーナー
あらすじとコメント
前回「エアポート’77/バミューダからの脱出」(1977)では、バミューダ沖に沈没したジャンボ機を地上から杞憂するしかない役柄を演じたジェームス・スチュワート。彼自身、第二次大戦では米空軍に所属し、晩年は、空軍大将にまで任命された人物。そんな彼と飛行機といえば、真っ先に浮かぶのがこの作品だろう。アメリカを代表する英雄の有名な実話の映画化。
アメリカ、ミズーリ。郵便飛行士のリンドバーグ(ジェームス・スチュワート)は、俄かに世間で騒がれている、誰が一番最初にアメリカとパリを無着陸で飛行するかという記録に重大な関心を持っていた。何人もがチャレンジし、失敗し続けていたが、劣悪な環境で飛んできた経験値と知識があり、自分なら成功できるという確信があった。
しかし、それには航空機購入に始まり、かなりの費用が掛かる。そこで彼は、地元の銀行や名士に融資を持ちかけた。しかし、まだ航空機自体が開発初期の段階で、墜落を繰り返し、都度死者まででていたので、誰もが躊躇った。
それでも彼の熱心さで、何とかチャレンジにこぎつける。しかし、購入を予定していた航空機メーカーは、パイロットは自社側で決めるとの前提があることを知り、消沈。
そんな中、カリフォルニアの弱小メーカーが、少ない予算で彼の要望通りの機体を作ると打診してきて・・・
大西洋無着陸飛行を単独で成功させた英雄の実話を描いた作品。
開発初期で、まだまだ安全性に大いなる疑問があった航空機。主人公は「強運」と「自信」という無鉄砲さで、名乗りを挙げる。
実際に彼が世界初の快挙を成し遂げるのは周知の事実なので、映画はどのように、それを捌いて行くのかに焦点が当てられる。
何故なら、飛行中は「単独」であり、無線も搭載しておらず、話し相手などいないので、会話による場持ちなど描けない。
当然、ナレーションが多くなり、回想シーンが多用される。
ディープな映画ファンならずとも想像に難くないだろう。
そこに持って来ての監督がビリー・ワイルダーである。舞台劇の映画化が圧倒的に多く、設定自体に妙があり、会話がメインのオリジナルを自らが映画用に脚本を共同執筆するタイプの監督。
そこからして、彼のキャリアでは、かなり異色と呼べる作品かもしれない。
確かに、監督名を伏せて映画をみると、これが、ワイルダー作品かと感じる人間も多いだろう。
それでも監督らしい、ハンカチやハエ、手鏡といった小道具の使い方や、細心の注意が払われた上に、それを意識させない編集など、流石にワイルダーを感じざるを得ない。
それにしても本作一作でしか起用していないジェームス・スチュワートの存在感は見事だし、誰ひとりワイルダー一家を出演させないどころか、名の通ったバイプレーヤーさえ起用していないところに、監督の気骨を感じる。
完全なる外様という立場を際立てつつ、オリジナリティを貫く。
スタッフ、キャストそれぞれが己を表現しつつ、調和が取れている作品と感じる。
内容からして年齢制限など関係なく、誰もがアメリカの英雄の物語に酔える。
しかも、ずば抜けた知能なり、財力もない一人の市井の青年である。そんな彼が、自己表現として大風呂敷を広げ、それを疑わない信念を持ち、且つ、それを成功させて行くという、アメリカの成り上がりへの期待度が投影させられる作品である。