三人の名付親 – 3 GODFATHERS (1948年)

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スタッフ
監督:ジョン・フォード
製作:メリアン・C・クーパー、ジョン・フォード
脚本:ローレンス・スターリングス、F・S・ニュージェント
撮影:ウイントン・C・ホック
音楽:リチャード・ヘイグマン

キャスト
ハイタワー / ジョン・ウェイン
ピート / ペドロ・アルメンダリス
カーニー / ハリー・ケリー Jr
スイート / ウォード・ボンド
スイート夫人 / メエ・マーシュ
母親 / ミルドレッド・ナトウィック
フローリー / ジェーン・ダーウェル
判事 / ガイ・キビー
ルビー / ドロシー・フォード

日本公開: 1953年
製作国: アメリカ アルゴシー・ピクチャーズ作品
配給: MGM


あらすじとコメント

ジョンフォード監督にしてベン/・ジョンソンも出演している西部劇。かなり異色だが、詩情豊かなフォードの魅力が遺憾なく発揮された秀作。

アメリカ、アリゾナテキサスからハイタワー(ジョン・ウェイン)、メキシコ人ピート(ペドロ・アルメンダリス)、若いカーニー(ハリー・ケリー Jr)の三人がやって来た。目的は銀行強盗である。

三人は偶然、街外れの『B. SWEET』という家の間で立ち止まり、大笑いをした。『優しくしてね』という表札に見えたからだ。すると、そこの主人スイート(ウォード・ボンド)が彼らを呼び止め、色々と町の情報を与えてくれた。何て素直な人間だと、ほくそ笑む三人。だが、何と彼は保安官だったのだ。

それでも、素知らぬ顔で立ち去ると、すぐに銀行を襲った。しかし、反撃され、カーニーが腕を負傷。すぐさま彼らを追う保安官たち。

三人は必死に逃げた挙句、砂漠地帯に入り込んでしまい・・・

人間の贖罪を描く宗教色の強い西部劇の秀作。

銀行強盗に成功したものの、既に顔見知りであった保安官らに追われ、図らずも灼熱地獄に入り込んでしまう三人組。

何とか逃げ伸びるのだが、保安官が水の入った革袋を撃ったので、水も食料もない状況だ。

追われる犯罪者と追手側の決死のアクションが展開するかと思いきや、そこから本作はがらりと変調する。派手な銃撃戦などなく、水飲み場を巡る頭脳戦へとなっていくのだ。

そして、タイトルにも謳っているように、やがて、三人組は女性の出産を手助けし、生後すぐの男児を抱えての逃避行へとシフトしていく。

また、その女性というのが保安官の身内だったことから、誤解を産み、私怨まで絡んで来る。

とはいっても、こちらは事前に女性や赤児に対する三人の姿を見ているので、予定調和に落ち着くのは容易に想像が付く。

ある意味、いかにもの西部劇なのではあるが、本作は異色だ。

何がかといえば、銃撃で誰も死なない作品にして、登場人物の全員に肩入れが出来るという点。

確かに三人組は強盗なので悪役ではあるのだが、根は善人だし、男気に溢れている。ただ、悪行の果ての因果応報として、人間性を試されているという印象だ。

それに保安官も誤解から三人を射殺しようと思い詰めはするが、それまでの描かれ方から急に、悪役へシフトしてくとも感じない。

そして本作の一番の異色さは「聖書」が重要な役割を果たしていること。要は、三人組は「三賢者」となって行くのである。その他にも、聖書に書かれていることが意味を成し、かなり宗教色の強い作品に仕上がっている。

誰も子供を持ったことがなく、犯罪者という流れ者として生きてきた男たちが、生命の誕生という崇高な瞬間に立ち会い、己らの人生を振り返り、改心していく。

特に、生まれたばかりの赤児に、瀕死の母親が、手伝ってくれた三人全員の名前を付ける場面などは鳥肌が立つほど素晴らしい。

以後、その赤児の名前の呼称で三人が、おかしく言い争う場面など、コメディ要素を散りばめ、三者三様の個性が映画に深みを与えている。

また、カメラも美しく、空や、砂丘を渡る風、塩湖など、とても印象的に登場してくる。まさに正調フォード節と呼べる風景なのだ。

それでいて、きっちりとした筋運びに安心して身を委ねていけるし、銃撃戦やアクションでは誰も死ななかったが、別な運命が待ち受けるという展開も胸に迫るものがある。

主役のジョン・ウェインが強盗の主犯という設定だが、大御所ゆえに単純な悪役なはずもない。

そこも、如何にもウェインらしいが、仲間のメキシコ人役を演じたペドロ・アルメンダリスや、保安官役のウォード・ボンドら助演陣の演技も見事で、人間の性善説を立証しようとする内容は、キリスト教信徒ではなくても、人間として充分に心に沁みる秀作である。

余談雑談 2014年3月8日
偶然に見つけ、以後、時々通っている文京区と新宿区の境にある、南イタリアに特化したパン屋。 さほど大きくはない窯が設置してあり、10人入れるかどうかという小さな店だが、一人で切り盛りする40歳程度のオーナーは修行してきただけあって、一体、何種