スタッフ
監督:ウィリアム・A・ウェルマン
製作:ハリー・A・シャーマン
脚本:イーニアス・マッケンジー、クレメンツ・リプリー 他
撮影:レオン・シャムロイ
音楽:エミール・ニューマン
キャスト
コディ / ジョエル・マクリー
ルイーザ / モーリン・オハラ
ドーン / リンダ・ダーネル
バントライン / トーマス・ミッチェル
チップス軍曹 / エドガー・ブキャナン
イエロー・ハット / アンソニー・クィン
フレデリッジ上院議員 / モローニ・オルソン
カーヴェル / フランク・フェンドン
ブレイザー将軍 / マット・ブリッグス
日本公開: 1950年
製作国: アメリカ 20世紀フォックス作品
配給: 映配
あらすじとコメント
前回の「ワイルド・アパッチ」(1972)でバート・ランカスターが演じた「スカウト」という職業。先住民との交流があり、白人側に付いて情報を与えたり、道案内をする人間である。今回もその職業が主役の作品にしてみた。
1877年アメリカ、アリゾナ視察に来た上院議員や、その娘ルイーザ(モーリン・オハラ)が乗る馬車が先住民に襲われていた。その馬車を助けたのは、バッファロー・ビル・コディ(ジョエル・マクリー)。
しかし、既にインディアンとの平和協定は締結され、襲撃したのは、単に酒に酔った先住民であった。そんな彼らを蔑むように野蛮人扱いするルイーザに、ウィスキーを教えたのは白人だ、と嗜めるコディ。
砦に着くと、上院議員たちの目的は鉄道建設のため、シャイアン族を居住地から強制的に移動させるべく来ていたことが判明。軍も命令に応じない場合は、武力制圧するとまで言い切った。
心配するコディをよそに、体制側は彼の幼馴染みであり、シャイアン族酋長の息子イエロー・ハンド(アンソニー・クィン)を呼びつけて・・・
歴史上の人物の生涯を、これぞ王道の娯楽西部劇として描く佳作。
既にインディアンたちとの和平が成立していた時期。主人公は民間人として軍の偵察や道案内を稼業としていた男で、銃の名手であり、バッファロー狩りの名手でもあった。
そんな彼が恋をし、結婚して子供まで儲けるが、折からバッファロー狩りが、レジャーとして白人たちに流行した挙句、乱獲したことで、インディアンたちが蜂起し、戦いに発展していくという歴史上の事実を手際良く捌いて行く作品。
当初は、銃や狩りの名手でも、字も書けず、彼に恋心を持つ先住民の娘に教育を受けたり、食事のマナーに戸惑ったりと、いかにも「西部男」として描かれていくのだが、その中にコメディ色あり、圧倒的な数で押してくる豪快な戦闘場面ありと、血湧き肉踊る、これぞ大衆娯楽の集約という作劇で進行する。
そんな彼が、先住民との戦いで英雄となり、大統領直々に勲章を授かるためにワシントンへ向うあたりから、物語は変調する。
アメリカは既に東部の一部の金持ちたちが当然のように支配する場所であり、大自然の天然児として生きてきた男が直面する『資本主義』という、いびつな価値観に翻弄されていく。
これも歴史的事実である。そんな彼は、どのように後年を過していくのか。
非常に有名な歴史上の人物なので、MGM製ミュージカルとして「アニーよ銃を取れ!」(1950)や、ポール・ニューマン主演で作られた「ビッグ・アメリカン」(1976)など、何度も映画化された人物である。
なので、ご存知の方もいるかもしれないが、本作は、正統派にして、娯楽活劇として作られた作品。
「つばさ」(1927)で、第1回アカデミー賞を獲ったウィリアム・A・ウェルマン監督の実にツボを押さえた作劇に酔える作品に仕上がっている。
製作されたのは1944年で、第二次大戦の最中。そんな時代に、既に先住民に理解ある主人公に対して、一部の大資本主義者たちや、それに、にべもなく従う軍隊、更には、単純に皮膚の色の違いで白人こそが優位であるという人間が登場し、彼らこそが先住民以上の悪役であるという設定も興味をひく。
そういった社会批判を織り込みながらも、娯楽西部劇として、緩急のついたテンポで仕上がっていて、安心して見られる。
このような映画こそ、アメリカ映画人の心意気が感じられ、移民であろうと、誰であろうと、「アメリカ人」として誇りを感じられる王道の西部劇作品の一本である。
それにしても、この手の映画はなくなったよな。