来るべき世界 – THINGS TO COME(1936年)

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スタッフ
監督:ウィリアム・キャメロン・メンジャース
製作:アレクサンダー・コルダ
脚本:H・G・ウェルズ、ラホス・ピロ
撮影:ジョージ・ベリナル
音楽:ミューア・マシスン

キャスト
キャバル / レイモンド・マッセイ
ボス / ラルフ・リチャードソン
ハーディング医師 / モーリス・ブラッデル
パスウォーシィ / エドワード・チャップマン
キャバル夫人 / ソフィー・スチュワート
ゴードン / デリック・ド・マーニー
ナンシ─ / アン・トッド
テオトコプロス / セドリック・ハードウィック
ロクサーナ / マーガレッタ・スコット

日本公開: 1936年
製作国: イギリス ロンドン・フィルム作品
配給: ユナイト


あらすじとコメント

今回も製作者アレキサンダー・コルダが関わった作品。有名SF作家H・G・ウェルズが原作し、脚本にも携わった珍しい映画で、科学技術の進歩が人間に何をもたらすかを描いた、今見るとシュールな作品。

イギリスらしい某国、エヴリタウン。人々が楽しげに集う1940年のクリスマスに、突如、サーチライトが灯された直後、街外れの浄水場が爆撃される。

宣戦布告もないまま、戦争に突入した模様である。「戦争は進歩のカンフル剤だ」と言う友人をたしなめる航空技師キャヴァル(レイモンド・マッセイ)だが、すぐに召集令が交付され、彼も戦場へと向かうことになる。

しかし、今回の大戦は、予想を遥かに超える長期消耗戦となり、何と終戦を迎えたのは1960年代後半であった。

荒廃したエヴリタウンは、局地戦が残り、まるで原始時代に遡った環境下になり、戦争で使用された毒ガスの副作用でか、夢遊病患者が増え、次々と人に感染している状況であった。医者のハーディング(モーリス・ブランデル)は、何とか特効薬を開発できないかと研究に没頭していたが、何せ、すべての物品が欠乏している。そんなエヴリタウンを統治しているのは軍人上がりのボス(ラルフ・リチャードソン)だが、独裁的な言動をとるため、敵対していた。

そんな折、突如、新型飛行機が飛来してきた。驚く市民の前に姿を現したのは、何と・・・

科学技術の進歩と人間の核心部分を問うSF映画の佳作。

初の近代戦と呼ばれた第一次世界大戦。それは戦車や戦闘機が登場し、果ては毒ガスという非道な兵器も開発され、使用された戦争でもあった。

そして、本作が製作されたのは、ベルリン・オリンピックが開催された1936年で、ナチス・ドイツが実際にポーランドに侵攻するのは、その3年後である。

つまり、ヨーロッパは、再度の世界大戦への恐怖が蔓延していた時期。

そこで、SF作家のウェルズは、もし、第二次大戦が起きれば長期化するであろうと考えたのが本作。

大戦で世界中が疲弊し、市民生活は困窮と恐怖に覆われ、原始時代のような生活を余儀なくされると。

となれば情報網は破綻し、近代兵器もガソリンや製鉄力がなければ使用できなくなり、小火器しか残らない。仕方なく小さな集落単位でまとまり、局地戦を繰り広げるしかないであろうと。

つまりは、移動手段を持たない人間たちには、そこが全世界なのだ。

しかし、一方で、大戦を終結させた科学者たちが「法と理性」により平和世界を統率し、世界をひとつにまとめようとしている。

一方的に進歩した科学者軍団側が使用するのは、戦意を喪失させる「平和ガス」だ。

当然、『眼には眼を』という発想は揺るがない。だが、それにより閉鎖的な集団にも平和な世界が訪れ、続いて映画は、一挙に、何と2036年にまで飛躍する。

そこでは何が起きているのか。流石に80年も前に考えられた設定であり、21世紀の現在では、これほど実際に人類が歩んだ過程はウェルズも想像し得なかったであろうが、それでも、本作が描いた未来世界には眼を瞠るものがある。

インベーダー・ゲームのような機械的点灯画面や、「セグウェイ」のような一人用立ち乗り移動機など、その先見性には驚く。

一方で、原子力はまったく想定外であったのだろうか、飛行機はプロペラ型だし、宇宙への挑戦はロケット形式でなく『宇宙砲』という大砲スタイル。ただし、何度も剥離を繰り返す複数段式であり、それも現実に近い。

70年代の跋扈する夢遊病患者の姿は、完全にゾンビに重なるし、登場人物も三世代に渡るのだが、同じ俳優が末裔を演じて行くので、その遺伝子を強く意識付けられる。

80年も前に製作され、本作で描かれた2036年まで、あと20数年。

人類はどのように進歩し、何を忘れて行ったのか。

結局、ウェルズが考えていた人間の本質は、幾重にも自問しながら、時は移ろうが、結局は何ら変わらないと突きつけてくるが、それでも、やはり人間は進歩すべきであると訴えかけてくる作品。

余談雑談 2014年5月24日
三社祭が終わり、地元は静けさを取り戻した。とはいっても、観光客は相変わらず多いのだが、地元住民の方々には、虚脱感が拡がっているという印象である。 やはり、神輿を担ぎにくる人たちが楽しく過ごせるように、気を揉むからだろうか。どの道、興奮のトラ