スタッフ
監督:J・リー・トンプソン
製作:ジョン・クエステッド
脚本:ブルース・ニコライセン
撮影:マイケル・リード
音楽:マイケル・J・ルイス
キャスト
バスク人 / アンソニー・クィン
ベルグソン / ジェームス・メイソン
ヴォン・ベルコウ大尉 / マルコム・マクダウェル
アリエル / パトリシア・ニール
レア / ケイ・レンツ
ポール / ポール・クレメンズ
ジプシーの頭 / クリストファー・リー
ペリア / マルセル・ボズッフィ
ルヌド / ミシェル・ローンズデール
日本公開: 未公開
製作国: イギリス マンデ─・フィルム・プロ作品
配給: なし
あらすじとコメント
「海底二万哩」(1959)で、印象的なネモ船長を演じたジェームス・メイソン。イギリス人俳優らしく、端正な演技で様々な映画に出演してきたが、今回は、変化球を投げてみる。第二次大戦下のユダヤ人家族の逃避行を描く未公開作。
フランス、南西部のツールーズ時は第二次大戦下で、ドイツがフランスを占領していた時期。駅にひとりのスペイン人が降り立った。彼はバスク人(アンソニー・クィン)で、農機具の購入だと申告したが、目的は別にあった。
彼は、スペインのピレネー山脈の山中で羊飼いをする男で、雪山には精通している。そこを見込まれ、ナチスに追われているユダヤ人の科学者ベルグソン(ジェームス・メイソン)をフランスからスペインに山越えをして、脱出させることだった。羊が心配なので、四日間と期限を切り、金で動いたのだ。
すぐにレジスタンスの男が接触して来て、教授は娼館に匿われていると。素知らぬ顔で同行し、秘密部屋にいる教授と対面するが、何と、脱出させるのは教授ひとりでなく、妻と思春期の息子と娘の計四人であると知り驚く。しかも妻は病弱そうで、徒歩での雪山越えなど不可能に見える。
話が違うとばかりに断るが、その時、ナチスの兵士が娼館に押し入ってきて・・・
執拗に追って来るナチスから決死の逃避行を繰り広げる戦争アクション作。
ユダヤ人一家の脱出を請け負った気性の粗いバスク人の男。平気で人を殺し、金で動くタイプだ。
方や、老境にさしかかった教授に病弱の妻。思春期の二人の子供は、父親が気弱そうだからか、どこか反抗的だ。
当然、そんな一家を見て、降りようとするが、ドイツ軍の魔の手が近付き、嫌々ながら無謀とも思える脱出行を展開して行く。
彼らに同行するのはレジスタンスの一名のみ。しかも、嫌がる主人公を説得させての同行だ。
最初は、列車で国境近くまで向かおうとするが、当然、そうは簡単に進まず、次から次へとサスペンスとアクションが珠数繋ぎの展開となっていく。
監督は、大好きな戦争映画の佳作「恐怖の砂」(1958)や、「ナバロンの要塞」(1961)を手掛けたJ・リー・トンプソン。ただし、既に絶頂期は過ぎていて、モタモタ感のある作品ばかりを輩出していた晩年の時期。
その中では、良く出来た作品には仕上がっている。
武骨で人嫌いなバスク人を演じるアンソニー・クィンや、心優しい紳士然としたジェームス・メイソンなど、分をわきまえた演技で安心感を持って見て行ける。
そんな出演陣の中で、異彩を放ち、完全に主役の座を勝ち取っているのは、イギリス人の怪優マルカム・マクダウェル。
主人公らを執拗に追いつめるナチスの将校なのだが、レジスタンスの男を拷問するシーンでは、コック帽をかぶり、エプロンまでしてシェフのように振る舞いながら、恐怖感を際立たせていく。
更には、娘を犯そうとするシーンでは、コメディ要素も漂わせ、どんどん、その異常性を加速させていき秀逸。
また、ドラキュラ俳優として有名なクリストファー・リーも、登場時間は短いものの、存在感がある。
そういった手慣れた俳優たちの演技で安定感があるものの、サスペンス場面での緊迫感がぶつ切りにされる、もたついた編集と終盤で登場する銃撃戦の派手なアクション場面など、もう少し、何とかならなかったのか、と思わせるのが難点。
それでも雪山でのロケ・シーンを多用したスケール感もあり、一応は、緩急の付いた作劇進行で、それなりに楽しめる娯楽作品には仕上がっている。
それにしても本作のマクダウェルは秀逸である。