メル・ブルックス/新サイコ – HIGH ANXIETY(1977年)

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スタッフ
監督:メル・ブルックス
製作:メル・ブルックス
脚本:ロン・クラーク、バリー・レヴィンソン、他
撮影:ポール・ローマン
音楽:ジョン・モリス

キャスト
ソーンダイク / メル・ブルックス
ヴィクトリア / マデリーン・カーン
ディーゼル / クロリス・リーチマン
モンタギュー / ハーヴェイ・コールマン
ブロフィー / ロン・ケリー
リローマン / ハワード・モリス
ベルボーイ / バリー・レヴィンソン
殺し屋 / ルディ・デ・ルカ
ウエントワース教授 / ヂック・ヴァン・パッテン

日本公開: 1978年
製作国: アメリカ クロスボー・プロ作品
配給: 20世紀フォックス


あらすじとコメント

メル・ブルックス。様々なジャンルの映画をパロディ・リメイクしている御仁である。中には、自身で監督・出演をすると『やり過ぎ』を感じることもあるのだが、これは成功している一本。

アメリカ、ロサンゼルス精神学の権威で、ノーベル賞受賞者でもあるソーンダイク(メル・ブルックス)は、重篤精神病療養所の所長に任命され赴任してきた。前任者が事故死したからである。

彼を出迎えたのは、所長代理のモンタギュー(ハーヴェイ・コーマン)と陰険そうな婦長ディーゼル(クロリス・リーチマン)であった。早速、所内を見て回ると、恩師で彼を新所長に推薦した病院顧問のリロルマン教授と再会したり、流石におかしな患者が大勢いたりした。

その中に、どう見ても完治しているような患者カートライトを発見する。しかも月に1200ドルという法外な入院費を取っている事実も判明。

何故、そのような患者を収容しているのかと疑問に思ったソーンダイクは・・・

いかにものヒッチコック映画を抱腹絶倒で描くコメディ。

ストーリーは、陰謀渦巻く病院で、何も知らぬ新任院長が次から次へと様々な困難に巻き込まれる姿を描くミステリー・サスペンス。

まさしく、ヒッチコックが好んで描いた内容に近い。しかも、二転、三転する起伏に富んだ、先読みを楽しませるほどの内容ではなく、あくまで 視覚に訴えてサスペンスを盛り上げていくのも似ている。

主人公は「高所恐怖症」で、それが原題。ヒッチのファンならすぐに思い浮かべようが、トラウマから高いところでは頼りなくなる「めまい」(1958)で、ジェームス・スチュワートが演じた主人公の病状と同じ設定である。

ならば、本来であれば、邦題は「新・めまい」であろうが、それじゃピンと来ないか。

その他にも、ヒッチ作品を連想させる設定が次々と登場し、一々、それをパロディとして描いていく。

当然、映画史上に名を残す「サイコ」(1960)のシャワー室のシーンも登場するし、突然、鳥類に襲われる「鳥」(1963)だって、でてくる。

さらにストーリー的内容に留まらず、例えば、室内で食事をしている人間を映しながらカメラが後退して行って、いつの間にか家の外にでてしまうという、ヒッチが産みだした摩訶不思議な映像テクニックもパロディとして描かれていく。

現在では、CGで当たり前に再現できるようなことを、未発達なカメラ機材で必死に考え、アッと驚く映像を輩出してきたヒッチコックに、最大限のオマージュを捧げつつ、徹底的にパロディとして描いていく。

ヒッチ自体に、あまり興味のない観客には見向きもされないであろうし、更に、ヒッチコック映画を多く見ていないと、これは何のパロディかと分らなくて、イマイチ盛り上がれないかもしれぬ。

そもそも、自分の映画にワンカットだけ出演するヒッチコックと、主演までするブルックスでは、温度差が違い過ぎる。とはいえ、そこを解った上で、製作された作品である。

少し濃すぎるブルックス的強引さもあるが、それでも、ヒッチ・ファンならば、一度は見るべきコメディ作品。

余談雑談 2014年9月13日
何だか、急に秋めいてきた。眼下の公園から聞こえてきた、うるさいほどの蝉の声はピタリと止み、朝晩の冷え込みを感じる。 ここにきて、昨年9月にオープンし、丁度、一周年という二軒の店にも秋風が吹いている。地元の店で、オーナーはともに三十代。 その