余談雑談 2011年2月12日

先週、実家で、年老いた母親と一緒に店番をしていた時のこと。二日続けて来客があった。

ひとりは、亡き父の妹である叔母と、遥か以前、結婚を意識した70代前後の男性。不意にやって来て、仏壇に線香をあげたい、と言って、上がり込んできた。しかも、花も供物もなく、手ぶらで、である。

現在、二人とも違う相手と結婚しているが、どうやら時どき連絡を取り合っていた模様。ところが、叔母は携帯電話を持っていなく、夫婦で老人ホームに入居しているので、思い立ったときに連絡が取り合えないとか。で、ホームで仲介する人が存在するのだが、その相手の番号を失念したので、叔母に聞いて欲しいとのことであった。

呆気にとられる母と自分。それでも、その紳士は、在職中は、自分がいかに優秀なサラリーマンであり、子供たちも有名企業に就職し出世もして、それぞれが都内に持ち家も所有しているので、確実に信用に値する人間であると、得意満面に語っていた。しかも、自分の連絡先は教えず、母にこちらから連絡を入れるので、今度の日曜までに叔母からの返事を頂きたいと、にこやかに仰って帰った。

その翌日は、亡父の4回目の『発ち日』であった。不意にやって来たのは、父が経営していた会社に50年以上も前、集団就職で鹿児島から来た元社員。

その方は、40年も前にうちを退職している。それでも、東京で最初にお世話になった会社であり、70歳を迎える現在、東京で未だに生き続けていられるのは、父の会社があったお陰だと。

何度か、会社清算の当日まで勤めていた旧友でもある社員たちと一緒に来たことがあったが、その日はたったひとり、手土産を持ち「今日が命日でしたね」と仏壇に向かった。

二名とも、70歳前後であり、各々の人生の幕の引き方を想定しているのかもしれない。

前日同様、同じく仏壇に手を合わせる男の後ろ姿の違いに感じった。

メルマガ詳細