パピヨン – PAPILLON (1973年)

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スタッフ
監督:フランクリン・J・シャフナー
製作:ロベール・ドルフマン、F・J・シャフナー
脚本:ダルトン・トランボ、ロレンツォ・センプル Jr
撮影:フレッド・ケーネカンプ
音楽:ジェリー・ゴールドスミス

キャスト
パピヨン / スティーヴ・マックィーン
ドガ / ダスティン・ホフマン
マチュレット / ロバート・デマン
クルジオ / ウッドロー・パーフリィ
ジュロ / ドン・ゴードン
トゥーサン / アンソニー・ザーブ
酋長 / ヴィクター・ジョリィ
バロット / ウィリアム・スミザーズ
尼僧院長 / バーバラ・モリソン

日本公開: 1974年
製作国: アメリカ アライド・アーティスツ作品
配給: 東宝東和


あらすじとコメント

『脱獄モノ』で繋げた。当時大スターであったスティーヴ・マックィーンとダスティン・ホフマンが組んだ「生への執念」を描く骨太の大作。

南米大陸の北東にあるフランス領ギアナ。そこにはフランスの囚人が収監される刑務所があった。

そこに殺人罪で14年の刑を受けたパピヨン(スティーヴ・マックィーン)が収監されるために連れて来られた。そんな囚人の中に、1928年の偽造国債発行の罪で有罪判決を受けたドガ(ダスティン・ホフマン)も一緒にいた。

収監先は、最初の一年で四割の囚人が死亡するという過酷な状況。当然、そんな中で生き延びるために、買収が横行し、脆弱そうで金を持っていそうな囚人は途中で、殺される運命だった。

頭脳犯であるドガは、身の危険を感じていた。そんな彼にパピヨンが、「俺が守ってやる」と密かに声を掛けた・・・

脱獄して生き延びる事に全てを掛けた男の執念のドラマ。

原作はフランス人のアンリ・シャリエールによる自伝的小説。

金庫破りという犯罪を犯したが、何故か殺人事件まででっち上げられた男。送られたのは「生き腐れの島」。脱走を試みれば2年の刑期が加算され、二度目は5年が増える。しかも、狭い独房生活を強いられるのだ。

本作はそういう状況下でも、必死に生への執念を燃やし、絶対に脱獄してやるという、ある種、狂気に取り憑かれた男のドラマだ。

この執念は、さすがの「肉食系」人種だと感じざるを得ない。そんな主人公と友情を育む「知能犯」や、いかにも悪人という囚人仲間たち。中には「男色家」もいる。

そういった、むせ返る男たちばかりの中で進行して行くのだが、それを美しいカリブ海を背景にしたり、逆に湿気と暑さを感じさせる密林や、汚く狭い独房といったメリハリの利いた見事なる画面のアンサンブルで見せ付けてくる。

また、主人公の名前「パピヨン」とはフランス語で「蝶」を意味し、それは彼の胸に刻み込まれたタトゥーから付いたあだ名。当然、通常であれば蝶は、自由に大空を飛ぶという、ストレートな願望に重なるし、胸に彫られたゆえに身動きが出来ないというメタファーもある。

そして、本物の蝶が本作で登場してくるが、単純なる「自由の象徴」でもなく、また、同じくタトゥーとして、更なる意味をも伝達していくというストーリィ展開。

監督のフランクリン・J・シャフナーは、「パットン大戦車軍団」(1970)で、やはり『凄まじい男の生き様』を描き、本作以後、「パットン」同様、ジョージ・C・スコット主演でヘミングウェイ作品を『大海原』を背景に、静けさの中で描いた「海流のなかの島々」(1977)を作った男。

この三作だけでも、「動」と「静」のメリハリを利かせた画面造形の中で『カリスマ性』を持った男の生き様を浮かび上がらせていると痛感させられる実力派である。

そこに持って来て、主演が当時の大スターであったスティーヴ・マックィーンとダスティン・ホフマンである。しかも、マックィーンといえば「大脱走」(1963)や「ゲッタウェイ」(1972)など目的を持って『逃げる』ことに執念を燃やす男を演じて来たという印象が強い。

方や、ホフマンは「真夜中のカーボーイ」(1969)などで、どこか他人に対し排他的で神経質だが、妙な人懐こさが滲む役のイメージがあった。

そういう両名のイメージを彷彿とさせつつも、今までの役柄とは違う設定。ただ、残念なのは二名とも熱演だが、少し上滑り感があること。

更に、フランス人という設定だが、どうにもフランス系には見えないし、当然、台詞も英語というアメリカ映画ならではの弱点もある。看板などはフランス語なので、妙な違和感が際立ってしまうのだ。

それでも、「映画」として立派に光り輝くのは、監督や主演の力量もさることながら、何といっても脚本を書いたダルトン・トランボの実力だろう。

彼は不朽の名作「ローマの休日」(1953)などを手掛けた後、『赤狩り』の犠牲者となり、ハリウッドを追われ、実際に1年間刑務所に入獄させられた男。偽名で復帰し活躍したが、まるで鬱積を晴らすかのように、骨太の作品を多く手掛けた。

本作には、そんな彼自身の怨念のような思いが込められていると感じる。

そんな男たちが集まって作り上げたドラマ。激しいアクションなどないが、それでも、スケール感溢れる骨太の佳作である。

余談雑談 2011年4月9日
都心は櫻が満開になった。 つい先立ての夜には最大規模の余震が来たし、まだまだ不安定要素も山積みだし、それらも色々と長期化しそうな気配でもある。 それでも、春は来て、櫻が咲く。それだけで、心が少し和むと言ったら、お叱りを受けるのだろうか。しか