スタッフ
監督:ラオール・ウォルシュ
製作:アーロン・ローゼンバーグ
脚本:ボーデン・チェイス
撮影:ラッセル・メティ
音楽:フランク・スキナー
キャスト
クラーク / グレゴリー・ペック
マリーナ / アン・ブライス
ポルトギー / アンソニー・クィン
グレイトハウス / ジョン・マッキンタイア
マミー / アンドレア・キング
セミヨン大公 / カール・エズモンド
セレノーヴァ夫人 / ユージニー・レオントビッチ
ユースタス / ハンス・コンリード
クレゲット / ブライアン・フォーブス
日本公開: 1953年
製作国: アメリカ ユニバーサル作品
配給: ユニバーサル
あらすじとコメント
今回もグレゴリー・ペック主演にして、前回の「白鯨」(1956)同様、海を舞台にし、船長役を演じた作品にしてみた。これぞ、娯楽活劇のお手本のような作品で、楽しめる映画。
アメリカ、サン・フランシスコ。1850年、大量のアザラシの皮をロシア領であるアラスカから持ち帰った、通称『ボストン男』こと、クラーク(グレゴリー・ペック)の船が寄港した。
しかし、彼はロシアから「野蛮なる掠奪者」として、眼を付けられていた。そんな彼には大いなる野望があった。それは、ロシア人たちが生態を考えず、アザラシを乱獲していることに危惧感を募らせ、将来を見据え、ロシアからアラスカを買おうと計画してしていたのだ。
しかし、それには多額の資金がいる。善後策を考える彼の前に、ライバルであるポルトギー(アンソニー・クィン)が横槍を入れてくる。しかもポルトギーは、ロシアの令嬢マリーナ(アン・ブライス)が、意に沿わぬ結婚を嫌い、アラスカ領事でもある伯父のところに逃げようとしていることに付け入り、逃がしてやるからと金だけ取って、知らぬ振りを決め込んでいたのだ。
マリーナは、婚約者が自分を捕えに来る前に何とかせねばと、頼りにならないポルトギーから、クラークに注目して・・・
海洋冒険娯楽活劇のお手本のような一本。
まだアラスカがロシア領だったころ。帆船で太平洋を渡り、極北の地でアザラシを捕えて売り捌く。当然、仲間の船乗りたちは荒くれ者ばかり。そんな中で、将来を見据え、アラスカ自体を買い取ろうと夢見る男。
壮大な発想である。しかし、主人公は、それが実現できると踏んでいるのだ。そこに、美女やライバルが絡んでくる。
しかもライバルは、何かと主人公を眼の仇にし、アザラシの毛皮は自分で獲らず奪えばいいとか、令嬢を脱出させられないのは、自身の力量不足を棚に上げ、主人公が、船員たちを引き抜いたからと言い訳をし、それでも、誰かれ構わず酒を奢らせようとするような身勝手の極みである。しかし、どこか憎めない男でもあるのだ。
ということは、本作での一番の悪役は、ヒロインのフィアンセであるロシアの軍人。既に、主人公と令嬢は一瞬にして恋に落ちているから、解りやすい設定だ。しかも、ロシア人将校は最新式の砲艦でやって来るという。
完全に先読み可能な展開をその通りに進行させ、お笑いあり、スペクタクルありと単純に楽しめる活劇として作られている。
そんな筋運びを何も考えることなく、単純に委ねていけるラオール・ウォルシュ演出は安定感があり、時代を感じさせる鷹揚なリズム感も、却って心地良いと感じた。
帆船や砲艦もミニチュアでなく、実物大のもの。合成画面などはチャチだが、時代を考えれば致し方ないところ。
特に、主人公とライバルの帆船同士が、荒波の大洋の中をぶつかりそうになりながら並走するシーンなど、迫力満点である。
中でも、ライバルを演じるアンソニー・クィンのふてぶてしいチャーミングさが際立つ。以後、ペックとクィンは「ナバロンの要塞」(1961)、「日曜日には鼠を殺せ」(1964)と計3回ほどコンビを組んでいる。そして、全作ともペックとは因縁のある設定なのだ。
しかし、本作の中で一番、美味しい役はペットとして飼われているオットセイ。さすがに『動物と子役には勝てない』というセオリーが納得できる演技である。
こういう作品に出会え、ニコニコしながら見られる時間は至福であると感じる一本。