スタッフ
監督: ピーター・ハイアムス
製作: ポール・N・ラザラス3世
脚本: ピーター・ハイアムス
撮影: ビル・バトラー
音楽: ジェリー・ゴールドスミス
キャスト
コールフィールド / エリオット・グールド
ブルーベイカー / ジェームス・ブローリン
ケイ / ブレンダ・ヴァッカロ
ウィリス / サム・ウォーターストン
ウォーカー / O・J・シンプソン
ケロウェイ博士 / ハル・ホルブルック
ジュリー / カレン・ブラック
アルバイン / テリー・サヴァラス
ローリン / デヴィッド・ドイル
日本公開: 1977年
製作国: アメリカ ラザラス、ハイアムス・プロ作品
配給: 東宝東和
あらすじとコメント
前回の「アウトランド」(1981)で脚本と監督を兼ねたピーター・ハイアムス作品。同じく、当時としては斬新な着想でありながら、妙なリアリティのある、異種SF映画の佳作。
アメリカ、ヒューストン。人類初の有人火星探査船『カプリコン・1号』が発射されようとしていた。乗員はブルーベイカー大佐(ジェームス・ブローリン)ら三名で、火星まで往復二年二ヶ月という長旅である。
副大統領が出席するなか、いよいよカウント・ダウンが開始された。しかし、発射10分前に、突如、乗員用ドアが開かれ、乗員三名が連れだされた。そしてカプリコン・1号は予定通り発射。
狐につままれたまま彼らは、ヘリコプター、小型ジェット機を乗り継いで砂漠の中のとある場所へ連れてこられた。そこで開発者のひとりケロウェイ博士(ハル・ホルブルック)が、乗組員らに話しだした。
実は、「生命維持装置」に重大な欠陥が見つかり、あのままでは計画は途中で失敗することが判明した。なので、新たに、諸君に協力してもらいたいミッションがあるのだが・・・
着想勝利の典型であるSF型アクションの佳作。
1969年アポロ11号が月面着陸に成功したとき、日本でも、感動を伴う大騒ぎになったことを鮮明に覚えている。そして次は『人類は火星を目指す』という言葉も聞いた覚えもある。
そんな延長線上で、本作はスタートする。しかし、NASA担当の議員や副大統領など、まるで醒め切っている。月面直陸以降、膨大な費用のかかる宇宙開発に政府筋は消極的なのだ。
そんな視点で開幕し、いきなり憧れの的である宇宙飛行士たちが連れだされ監禁される。
突然の変調。そして、何と、二年以上の間、地球上で隔離され、廃倉庫に見事に組まれた、着陸船と火星そのもののセットで、演技をしろということになる。当然、バックには巨大な政府絡みの組織が関わっている。断れば家族にも危害が及ぶ。
そして、ワザと時差を作ったり、スローモ-ションといったビデオ技術を駆使し、ヒューストンと連絡させる。
見事なまでに再現される「生中継」に、思わず、実は月着陸も、同じ手口の『大いなるイリュージョン・ショー』ではなかったのかと観客の猜疑心をくすぐる。
ワクワクする展開だ。そして、その計画に気付いたNASA職員の友人が、突如、この世から存在自体が消去されたことに疑問を持った主人公である報道記者が、真実を探り始める。当然、『謎の組織』から命を狙われる羽目になる。
まァ、ありがちな設定ではある。だが、ある程度丹念に、且つ、スピーディに進めるピーター・ハイアムス監督の捌き方は上手いので 飽きずに見ていくと、中盤、また映画は変調する。
何と、やっと帰還する大気圏再突入時に耐熱シールドが破損し、探査船が消滅。その事実を知る乗組員たち。当然、自分たちが地上で生きていることは絶対の秘密であるし、これで間違っても家族と再会できる可能性がゼロになった、と。つまり、自分らは殺される。
いやいや、面白いと感じた。それからはまた面白いアクションの連続となる。壮大な設定から、意外性のあるコンパクトな展開とメリハリの連続。
確かに製作費のかかった作品であるのだが、妙なB級感も併せ持つ。その落差と妙味。秀作、名作の類ではないが、一度は見ておいて損のない作品である。