ハノーバー・ストリート/哀愁の街かど – HANOVER STREET (1979年)

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スタッフ
監督:ピーター・ハイアムス
製作:ポール・N・ラザレス3世
脚本:ピーター・ハイアムス
撮影:デヴィッド・ワトキン
音楽:ジョン・バリー

キャスト
ハロラン中尉 / ハリソン・フォード
マーガレット / レスリー・アン・ダウン
セリンジャー大尉 / クリストファー・プラマー
トランボ少佐 / アレック・マコーワン
チミノ少尉 / リチャード・マシュール
ハイヤー少尉 / マイケル・サックス
サラ / パツィー・ケンジット
バート大佐 / シェーン・リマー
パイク / マックス・ウォール

日本公開: 1979年
製作国: アメリカ ラザラス/ハイアムス・プロ作品
配給: コロンビア


あらすじとコメント

ピーター・ハイアムス脚本&監督つながり。第二次大戦下のロンドンで繰り広げられるメロドラマからアクションへと変貌していくサスペンスフルな作品。

イギリス、ロンドン。ときは1943年、ドイツ軍による爆撃も増し、誰もが死と隣り合わせを痛感していたころ。

アメリカ空軍の爆撃隊に所属するハロラン中尉(ハリソン・フォード)は、休暇で来ていた市中でイギリス人の従軍看護師マーガレット(レスリー・アン・ダウン)と知り合った。一瞬にして惹かれ合う二人。

しかし、彼女にはイギリス情報部勤務のセレンジャー大尉(クリストファー・プラマー)と娘の家族があった。当然、いけないことだと思う彼女だが、ヤンキーのハロランは、押しの一手で迫る。お互いがいつ死ぬとも知れぬ時代である。心揺り動かされるマーガレット。

だが、何とか、彼の誘惑を振り切り、逃げるように去った瞬間、ドイツのロケット爆弾が飛来してきて・・・

戦争を背景に、ありがちな不倫ドラマから意外な展開を見せる佳作。

戦時下のロンドンでの恋愛ドラマというと往年の映画ファンなら「哀愁」(1940)を思い浮かべるであろうか。それに限らず、戦時下ではないにしろ「心の旅路」(1942)、「逢いびき」(1945)と、静かだが激しい女の情念を、どこか悲劇的に描く映画をイメージする人もいるかもしれない。

本作も、その手の映画をまったく踏襲するかのようにスタートする。

タイトル・バックは青空の中をゆっくりと鳥のように飛行しがら、ジョン・バリーによる甘美な音楽が重なる。そして、ロンドンのバス停で、偶然知り合う米兵とイギリス女性。それもキザったらしくなく、ユーモアに満ちた出会い方。このあたりは、ロンドンを舞台にした不倫コメディの傑作「ウィークエンド・ラブ」(1973)にも通じる。

しかし、映画は、往年の典型的不倫メロドラマとして進行し始める。

米軍パイロットの度重なる命懸けの出撃。そんな中で仲間たちと交わされる、いかにもアメリカ的な野暮さと低俗さが混じる会話。一方で、イギリス女性は、優しく思慮深い情報部勤務の紳士たる亭主と、生意気さが大人へのステップを上り始めたと感じさせる娘との平穏なる生活。

それらが交互に描かれ、主人公の二人は郊外のホテルで逢瀬を重ねていく。

何を今更、こんな正統派メロドラマか、と思いながら見て行くと、後半いきなり変調する。

確かに御都合主義というか、あり得ない展開だと思う人もいよう。しかし、そこからが、本作の白眉なのだ。

詳しくは書かないが、何故かサスペンスに満ちたアクションへと変わる。

これには当時、驚いた。そこに脚本と監督を兼ねたピーター・ハイアムスの着想点の面白さと、それを正統派で押して行く演出力の妙味を感じた。前回扱った「カプリコン1」でも、そうであったが、アイディア勝利の着想とB級感溢れる演出。

ところが、本作では、片一方の得意技である『B級感』を排除し、往年のスタイルを踏襲しつつ、且つ、戦争アクションという欲張った演出をも見せる作劇。ある意味、これが本当にハイアムスの演出かと思わせる。

どちらかというと男性メインのアクション系が得意と感じさせるが、脚本家としては、田舎から大都会へでて来た若い女性が痛感する疎外感と、心の空虚感を見事に描写したアメリカン・ニュー・シネマの秀作「愛はひとり」(1971)を書いている。

その非凡な才能は本作でも発揮されていると感じる。中々の才人であると思うのだが、90年代後半以降の作品群には閉口する。

出演者は、まだまだ若僧で、どこかアクターズ・スタジオ的演技が鼻に付くハリソン・フォードは置いておくとして、秘めたる激情型ヒロインのレスリー・アン・ダウンと、いかにもイギリス俳優というクセのある演技を披露するクリストファー・プラマーのヤラシイほどの演技には舌を巻いた。

ありがちな不倫ドラマと、大作感はないものの、手堅い戦争アクションが融合した異色ドラマである。

余談雑談 2011年12月17日
「今年の一文字」が発表された。大方の予想通り『絆』である。こちらは、個人的に『一』と考えていた。今年は「2011年」だし、あれは「11日」に起きた。 発表の翌日、高校の友人と長年の恒例になっている「二人だけの忘年会」に出掛けた。 出向いたの