ブラジルから来た少年(未) – THE BOYS FROM BRAZIL (1978年)

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スタッフ
監督:ファランクリ・J・シャフナー
製作:マーティン・リチャーズ、スタンリー・オトゥール
脚本:ヘイウッド・グールド
撮影:アンリ・ドカエ
音楽:ジェリー・ゴールドスミス

キャスト
メンゲレ博士 / グレゴリー・ペック
アッカーマン / ローレンス・オリヴィエ
サイバート / ジェームス・メイソン
エスター / リリー・パルマー
フリーダ / ユタ・ヘイゲン
コーラー / スティーヴ・グッテンバーグ
ベイノン / デンホルム・エリオット
ブルックナー教授 / ブルーノ・ガンツ
ロフクィスト / ウルフガング・プライス

日本公開: 未公開
製作国: アメリカ プロデューサー・サークル・プロ作品
配給: なし


あらすじとコメント

「マッド・サイエンテスト」という存在。前回は愛娘のために異常な行動をとる男であったが、今回は「崇拝する人間」のために生きている科学者。共通するのは、やはり『異常性』。

南米パラグアイ。ユダヤ系アメリカ人のコーラー(ステーヴ・グッデンバーグ)は、旧ナチス残党たちが集まり、何やら画策している事実を掴む。

そのことをオーストリアのウィーンに住む、現在も逃亡中のナチス戦犯たちを追い続けるアッカーマン(ローレンス・オリヴィエ)に通報するが、その手の人物たちがパラグアイに潜伏しているのは周知の事実だと答えた。

それでも更に調査を続けるコーラーは、かつて強制収容所で恐ろしい人体実験を繰り返していたメンゲレ博士(グレゴリー・ペック)が合流した事実を突き止める。そして盗聴器から聞こえた来たのは、この2年半でヨーロッパ、アメリカ、カナダと世界中で94名にのぼる『65歳で主に公務員』を殺害するという話だった。

しかし、その直後・・・

サスペンスフルな展開で見せるスリラー映画の佳作。

「ナチスの残党」を追う、ひとりの若者。まるでスパイ・ドラマのような幕開け。

続いて登場するのが「ナチス・ハンター」の異名を取る老人。しかし、登場の仕方は「動く標的」(1966)の探偵ルウ・ハーパーか、「刑事コロンボ」のように、どこかトボケた上に侘しさも漂って、コメデイ的でもある。

そんな設定だが、若者が南米から掛けている長距離電話越しで、観客に『何か起こるぞ』という不安感を増幅させる編集の妙は見事。

中々、上手い出だしである。

そして映画は、「ナチスの残党」たちが、何やら恐ろしい計画を実行しようとしている構図が浮かび上がってくる。「65歳の公務員」、「年の離れた妻」、「94名」といったキーワードが何を意味するか。

ミステリー・タッチになり、世界各地での出来事を追うという拡がりを見せながら、その謎を解いて行く展開。そして、中盤を越えたあたりから、今度は『ホラー色』まで加味される。

見ていて、この作劇方法は、完全にヒッチコックの「サイコ」(1960)だと感じた。それを、実にスムースに繋げていくフランクリン・J・シャフナー演出も上手い。

謎を追っていくうちに、次々と殺人が起き、死人がでる。しかも殺害の方法も毎回異なる。そして謎が解明されるに伴って、増して行くホラー・タッチ。

狂気を秘め、何かの拍子で激高する人物。逆に、飄々とした人物。また、「老獪」と呼ぶにふさわしい、顔色ひとつ変えないが、腹の内は読めない人物。そういった人物たちが跋扈し、更なる恐怖へと繋がっていく進行。

当時としてはどこか本作で描かれる「計画」設定そのものが、SF的でもあったであろうが、21世紀の現在では、真実味を帯びたとも感じる。つまり、その設定自体が、「起こりうる恐怖」として存在する時代になったと感じる。

しかし、一方で、どこか忘れ去られた感や、すでに関係者たちが死亡しているであろう「ナチス」や「戦犯逃亡犯」という存在。

そういった加速度が増し続ける現代社会ゆえに起きる設定の逆転すらが、ある意味、『時代』というシニカルさであるとも感じる。

本作は劇場では未公開であるが、ビデオやDVDは発売され、一部の映画ファンの間では、話題になった佳作である。

余談雑談 2012年5月12日
東京スカイツリーの開業まで二週間後を切った。 このところ、東京の天気は、雹や突風、更には「竜巻情報」まで、毎日騒々しいが、高い金払って、高い場所から見る、そんな天気はどうなのだろうかと思う。それこそ、すべて下界の出来事なのか。はたまた、凄い