スタッフ
監督:ジャック・コンウェイ
製作:サム・ジンバリスト
脚本:ジョン・リー・メイヒン
撮影:ハロルド・ロッセン
音楽:フランツ・ワックスマン
キャスト
マクマスタース / クラーク・ゲイブル
サンド / スペンサー・トレーシー
ベッツィ / クローデット・コルベール
ゴールドリッチ / フランク・モーガン
カレン / ヘディ・ラマー
コンプトン / ライオネル・アトウィル
ハーモニー / チル・ウィルス
ホイッティ / マリオン・マーティン
スパニッシュ・エヴァ / ミーナ・キャンベル
日本公開: 1947年
製作国: アメリカ MGM作品
配給: セントラル
あらすじとコメント
前回扱った「山」(1955)の主演であり、名優中の名優スペンサー・トレーシー。そんな彼がクラーク・ゲイブルと共演した作品を選んだ。アメリカン・ドリームの最右翼である、石油採掘に賭ける男たちの波乱万丈の人生を描く傑作。
アメリカ、テキサス。1918年、石油採掘に湧く街に、ひと旗挙げようとサンド(スペンサー・トレーシー)がやって来た。
しかし、金はなく、試掘する場所を見つけたが資材を借りられないでいた。意気消沈しながらも、泥だらけの道を避けるべく、50セントの渡り賃を払い、渡し板を歩きだすと、向こうからマクマスタース(クラーク・ゲイブル)が渡って来た。真ん中で二人は互いに譲らず、口論となった。遂に喧嘩か、というとき、銃声が響いた。採掘資材の代金を踏み倒した男を保安官が撃ったのだ。驚いた二人は泥道に落下。
以後、妙にウマが合い、口八丁手八丁というか、詐欺まがいで資材を借り出した。実は、正直者で不器用なサンドは、心に秘めた恋人がいた。ベッツィ(クローデット・コルベール)だ。石油を掘り当てたら、呼び寄せるつもりでいたのだ。しかし、不器用な彼は、意中の存在をマクマスタースに言えないでいた。
ある晩、マクマスタースが街に行くと、見知らぬ美人がいた。お調子者の彼は、当然のように声を掛ける。
その女性こそ・・・
これぞ「アメリカの夢」とも呼べるハリウッド映画全盛時代の傑作の一本。
20世紀初頭の『アメリカン・ドリーム』。貧しき者らが夢見るのは、「金」か「石油」の採掘で儲け、成功者となること。
その石油採掘に、夢と人生を賭けた男たちの話である。
映画は、この「正直者」と「世渡り上手」という真逆のコンビが、割と早々に石油を掘り当てるが、正直者の秘めたる相手が、他方と知り合ってしまったことから、更に二転三転して行く進行。しかも、余りにも劇的な変化を、お互いが遂げていく展開と相成るのだ。
製作年代を考えれば、それ以外にはなかろうと容易に想像が付くだろうが、それにしても、劇的である。
ある意味、大河ドラマにもなる内容を二時間で納める。そこで必要なのは、観客を飽きさせないための、適度な端折りとダイナミズムである。
そこは見事だ。短いカッティングで、映像として説明し、重要なポイントに来たら転換する。
実に、心地良いリズム。しかも、メインとなるのは一人の女性を巡る男二人の、それぞれのポジショニングと心意気である。
大人になり、社会で辛酸をなめてきた男たちが、不意に生涯の親友を得る。しかし、二人とも妙に頑固。その二人を繋いだり離したりする一人の女性。
しかし、彼女も善人だ。そんな女性も彼ら同様、ジェット・コースターのような人生を送りだす。
中盤から、更に美女が絡んで来て、ストーリィをややこしくして来るのだから、見ている側も引き込まれてしまう。
それぞれが、絶頂とどん底を経験しつつ歩む人生。いやいや、ストーリィとしてもメリハリが見事で、それを具象化して行く俳優陣も見事。
当時のMGMの看板男女優4人が競演し、それぞれの役を演じている。男優二人のゲイブルとトレーシーは、本作の前に、「桑港」(1936)と「テスト・パイロット」(1938)で、二度ほど共演しているが、前作二本は、どちらもトレーシーが、完全に脇役として控えた演技をしてゲイブルに華を持たせているが、本作では、完全に逆転していると感じた。流石の名優中の名優である。
「アメリカン・ドリーム」が叶ったり破れたり。しかし、未だに拝金主義が跋扈する時代に、今から70年も前に、本当に大切なものは何かと教えてくれる。
文句なく、傑作である。