スタッフ
監督: ラリー・ピアース
製作: エドワード・S・フェルドマン
脚本: エドワード・ヒューム
撮影: ジェラルド・ハーシュフェルド
音楽: チャールス・フォックス
キャスト
ホリー警部 / チャールトン・へストン
バトン / ジョン・カサヴェティス
マッキーヴァー / マーティン・バルサム
ラムゼイ / ボー・ブリッジス
ルーシー / マリリン・ハセット
スティーヴ / デヴィッド・ジャンセン
ジャネット / ジーナ・ローランス
サンドマン / ジャック・クラグマン
コッブ / ウォルター・ピジョン
日本公開: 1977年
製作国: アメリカ ユニヴァーサル作品
配給: CIC
あらすじとコメント
前回がLAを舞台にした精神を病んだ爆弾魔の話。今回もLAで異常者がクローズ・アップされる。ただし、B級ではなく、スケール感溢れる巨編だ。
アメリカ、ロサンジェルス。10万人を収容するメモリアル・スタジアムでロスとボルティモアによるプロ・フットボールの王座決定戦当日。
早朝、近くでサイクリング中の男性がライフルによって射殺される事件が起きる。しかし、国中が沸き返る試合を前に地元警察はそれどころではなかった。
喧嘩や暴動など、万が一の事態が起きないために地元警察のホリー警部(チャールトン・へストン)やバトン(ジョン・カサヴェテス)率いる警察の特殊部隊SWATなどが警備に当たり、競技場総配人マッキィヴァー(マーティン・バルサム)も、大統領が試合途中から観戦に来るのでハラハラしていた。
開始時間が刻々と迫り、失業中のラムゼイ(ボー・ブリッジス)が家族連れで、また、わざわざボルティモアから応援に来た不倫関係のスティーヴ(デヴィッド・ジャンセン)とジャネット(ジーナ・ローランズ)など、多くの観客が集まり、いよいよ試合が開始された。
一進一退の試合が続き、観客たちのボルテージも上がっていった。そんな時、飛行船積載のカメラがスコアボードの裏側にライフルを持つ男がいるのを写しだして・・・
多くの人間たちに降りかかる災難を描く、銃社会アメリカを投影した作品。
当時、ブームだったパニック映画の一本。飛行機や豪華客船、列車などとは違い、本作は動かない場所で起きる集団心理によるパニックを描く。この手の映画では、豪華キャストでの様々な人生を背負う人間たちがパニックに巻き込まれて行くという「グランド・ホテル形式」で話が進行することが多い。
本作も然り。十人十色と言うし、見る側はどの登場人物に肩入れするかで、印象も変わる。まして必ず死者や怪我人がでる展開が待ち受けているのだ。
当時、そこそこ名の通った役者が数多く出演している。そんな中、SWATの隊長を演じたジョン・カサヴェテスがバツグンにクールで圧倒的な存在感を示す。一方で、主役のチャールトン・ヘストンは盛りが過ぎて、動きに切れがないにも関わらず、いかにも大スターだという自負ばかりが目立った。
更に気になったのは、10万人の観客がいる設定だが、実際のパニックシーンでは、当然、そこまでエキストラが動員できるはずもないし、ひとりひとりへの細かな動きの指示も不可能である。よって、迫力ある群集シーンとそうでないシーンの差が歴然としてしまい、カット割りによって、急にトーン・ダウンしてしまうのが残念。
作品自体が、大掛かり過ぎてアンバランスな印象が拭えないのだが、特に面白いと感じたのはライフル魔の設定。
たったひとりでスタジアムの一番高い場所に潜伏し、10万人に脅威を与える。しかし、決して、アップで顔が写ることなく、しかも、どういった素性であるのかが一切、明かされない。ゴルゴ13のような大統領を狙う狙撃者なのか、それとも、精神を病んだヴェトナム帰還兵なのか。
そこに本作の主旨が見えよう。銃社会アメリカ。ライフル魔の素性が解らないので、有効な鎮圧作戦が簡単には決められない中、試合は白熱し、観客たちは盛上っていく。そんな中、ライフル魔の銃口がいつ、火を噴くのか。
中継用のテレビ・モニターを通してのみ、ライフル魔の動向が見られるという設定が、いかにも当時の世情を反映している。
例えば、当時から言われていた「アメリカは世界の警察」という視点で見ると、登場人物たちはそれぞれ個別な問題を抱えた世界各国であり、本人たちは知るよしもないが、実は『世界のアメリカ』というカメラによって管理され、『ライフル魔』という外敵はたったひとりでも、排除するというふうに見えなくもない。
更に、うがった見方をすれば、実は、『ライフル魔』こそアメリカであるという製作者たちの意図をも感じる。
そういえば、個性的で実力派が多い出演者の中で、自分こそ大スターとして演技する主役のチャールトン・へストンって、全米ライフル協会に関わってなかったかな。