スタッフ
監督: ロジャー・スポッティスウッド
製作: ジョナサン・ダブリン
脚本: ロン・シェルトン、C・フローマン
撮影: オーグスティン・ユアルチ
音楽: ジェリー・ゴールドスミス
キャスト
プライス / ニック・ノルティ
グラジア / ジーン・ハックマン
クレア / ジョアンナ・キャシディ
オーティス / エド・ハリス
ジャージー / ジャン・ルイ・トランティニアン
ソモサ大統領 / ルネ・エンリケス
ラファエル / ホルゲ・ゼペタ
ミス・パナマ / ジェニー・ガーゴ
エステラ / アルマ・マルティネス
日本公開: 1985年
製作国: アメリカ ライオン・ゲート作品
配給: コロンビア
あらすじとコメント
今回の舞台は中米ニカラグア。実際にあった内乱にスポットを当てた骨太の社会派作。
1979年のニカラグア。40年以上に渡り、ソモサ家が独裁する国である。しかし、ソ連の社会主義に影響を受けたサンディニスタ民族解放戦線が内乱を起こし、混乱していた。
内情を取材しようと世界中から報道陣が詰めかけている。その中に、直前までアフリカで取材していた『タイム誌』の記者グラジア(ジーン・ハックマン)、恋人でラジオ局のレポーター、クレア(ジョアンナ・キャシディ)、グラジアの親友でフリー・カメラマンのプライス(ニック・ノルティ)の姿があった。
そんなグラジアはアメリカの有力TVのメイン・キャスターとしてスカウトされ、受諾しようどうかと悩んでいた。しかし、クレアは安定した生活は欲していないと別れ話を持ちだす。更に困惑するグラジア。
ある夜、三人がナイトクラブで談笑していると、突如、革命派が乗り込んできて爆発騒ぎを起こす。そのことを記事にしようと本国へ連絡を入れるグラジア。しかし、本社の扱いは冷たく、意気消沈した彼は、二人を残し単身帰国してしまう。
残された二人は革命軍のリーダー、ラファエルを取材しようと行動を開始するが・・・
果たしてジャーナリズムは正論中道かという問題を提起する野心作。
戦場にこそ生きる価値を見出 し、報道を自分の使命と考え、命懸けで行動する。これがジャーナリストのイメージであり、真の姿であろう。
常にどちらサイドにも立たず、真実を切取ろうとカメラ片手に駆けずり回る。バツグンに格好良い職業として登場する。
しかし、彼らとて人間である。恋もすれば嫉妬もする。そういった微妙な三角関係を織り交ぜ、様々な人物が交錯する。
アフリカで撮った写真の一枚がタイム誌の表紙を飾り、戦場カメラマンとして名を馳せるフリー・カメラマンの主人公。大統領のパーティーに呼ばれ、愛人とのツーショット写真をせがまれ、次の日は革命軍サイドからお呼びが掛かる。ここに中立といいながらも、尋常ではない日常に身を投じ続けて麻痺した感性が浮かぶ。
そんな彼らを利用しようとするアメリカの大手広告代理店のエージェント、自分はスパイだと公言するフランス人。そして、主義主張に関係なく、金のため戦争に加担する傭兵。
それぞれ、どこかクールさが漂うが、全員が自分勝手である。そんな中で、全員が内乱に翻弄されていく。
兵士でもないくせに、砲弾の飛んでくる音などで距離感が解り、反射的に身をかわすカメラマン。それでも、カメラは手放さず、シャッターを押し続ける。ある種、生き抜く知恵を体得し、ごく普通のように行動する。そのリアル感が、破壊され、寂れた町なかで繰り広げられる戦闘シーンで際立つ。
更には、常軌を逸していく兵士、革命の意味合いも知らずに、ただ熱に浮かれる少年や、嫌でも避難できず日常生活を営むしかない人々。
誰もが、とてもリアルな人間たちとして描かれ、特に、いつも冷静にレンズ越しに一瞬の真実を切取ろうとする主人公を、更に、レンズを通して、連続する映画として描写しようと進行していく作劇に、監督スポッティスウッドの心意気を感じた。
キャスティングも適材適所だが、特に金のために動くくせに、アフリカでは黒人ばかりだと言い、ニカラグアでは褐色ばかりと差別的に笑う庸兵を演じたエド・ハリスが出色。登場時間は短いが、でてくると完全に映画を掻っ攫ってしまう。
大国アメリカがどのように他国を懐柔し、操作しようとするのか。マスメディアの実体とは何か。
平和が続く国に住んでいると、逆な意味で感性が麻痺してくる。日常に当り前のようにある戦闘。その中で人間は何をなそうとするのか。もしくは目を背け、何とか対岸の火事として流そうとするのか。
複雑な心情を喚起させる骨太作である。