スタッフ
監督: ジョン・フォード
製作: ウォルター・ウェンジャー
脚本: ダドリー・ニコルス
撮影: バート・グレノン
音楽: ボリス・モロス
キャスト
キッド / ジョン・ウェイン
ダラス / クレア・トレヴァー
ブーン / トーマス・ミッチェル
ハットフィールド / ジョン・キャラダイン
ルシー / ルイーズ・プラット
バック / アンディ・ディヴァイン
ウィルコックス / ジョージ・バンクロフト
ピーコック / ドナルド・ミーク
ゲートウッド / バートン・チャーチル
日本公開: 1940年
製作国: アメリカ ユナイト作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
何とか200回まで来た。で、今回はジョン・ウェイン繋がり。往年の映画ファンなら数十回見たと豪語する人も多い映画史上の名作中の名作。
アリゾナ州、トントの町。そこにニュー・メキシコのローズバーグ行の駅馬車が到着した。ここで小休止がてら馬を替えるのだ。
乗客はこの先の駐屯地にいる騎兵隊大尉の夫を訪ねていく身重のルシー(ルイーズ・ブラット)と酒の行商人ピーコック。
町からは新たに、いかがわしい酒場女だと婦人団体から追放されたダラス(クレア・トレヴァー)、家賃滞納で追いだされたアル中の医者ブーン(トーマス・ミッチェル)、元南軍将校で、今はギャンブラーのハットフィールド、銀行家のゲートウッドが新たな乗客として加わった。更には保安官が乗り込んできた。刑務所を脱獄したキッド(ジョン・ウェイン)が、必ずやローズバーグにいる親兄弟を殺した相手に仇討ちに行くと踏んだからだ。
しかも、駅馬車の通り道近辺でアパッチ族の酋長ジェロニモが暴れだしたとの情報を得て、途中まで騎兵隊が警護に当たることになった。一挙に全員に緊張が走った。
トントを出発する駅馬車。誰もが道中の無事を祈っていると、荒原でひとりの若者が待っていた。
彼こそ、リンゴ-・キッドだった・・・
映画史上に名を残す西部劇の傑作。
淀川長治をはじめ、昔の数多くの映画評論家、シネマ・ディクトたちが、『わが生涯のベストワン』と豪語した作品でもある。
見事に緩急のついた作劇で今見てもその印象は色褪せない。
ただし、それは自分のような古い映画を数多く見てきた人間や、すでに鬼籍に入った映画ファンたちの印象でもあろうか。
白黒スタンダード画面であり、昨今の驚くべきCGの発達を当り前に見ている人たちには、違う印象を持つだろうとも推察する。
しかし、映画史上に名を残す作品であることは間違いないし、起承転結のはっきりとした展開にして誰が見ても何も考えずに身を委ねられる映画である。
先ず、駅馬車に乗る人間たち全員のバック・ボーンが描かれ、主人公が登場。この手の展開は、やはり映画史上避けて通れない「グランド・ホテル」(1932)の影響で、一ヶ所に集うそれぞれの人生を背負った人間たちというドラマに厚みを加える手法である。
しかし、当の「グランド・ホテル」がホテルという動かない場所で進行したのに対し、本作はどんどん移動していく。
そんな乗客には酒場女と貴婦人という二名の女性が同乗している。しかも貴婦人は身重である。更にはアル中の医者。その上、凶暴なインディ アンが暴れているという設定だし、主人公が敵討ちをしようとしていることも解っている。
そういった設定が観る側の想像通りに進行する。映画とは「娯楽」であるという観点から見れば、これ以上、単純明快で、かつ、スピーディに進行する映画は滅多にない。
というよりも、そういった作劇の映画はこれが原点であるといっても過言ではなかろう。逆にあまりにもリズミカルに進行するので、まるで放映時間が決まっていたTVでの尺に合わせるために、カットしたのではないかと感じられるほどである。
一度聞いたら忘れられないテーマ曲。静と動の見事なるリフティングにより、血湧き肉踊る展開。特にアパッチ襲撃シーンの見事さは何度見ても色褪せないし、逆にCGに慣れた人たちにこそ見てもらいたい。
疾走する馬やアクション。ジョン・フォード監督が、何故「巨匠」「名匠」と呼ばれたかが痛感できる見事なる演出。これぞホンモノ。
ここで扱うので、久し振りに再見したが、冒頭のテーマ曲が流れた瞬間に万感迫る思いに震えた。それは以前からの刷り込みだろうと仰る御仁もいよう。
しかし、それでもこの作品は傑作中の傑作にして、永遠に走り続ける。