スタッフ
監督: ジョン・フォード、マーヴィン・ルロイ
製作: リーランド・ヘイワース
脚本: ジョシア・ローガン、F・ニュージェント
撮影: ウィントン・ホッチ
音楽: フランツ・ワックスマン
キャスト
ロバーツ / ヘンリー・フォンダ
モートン艦長 / ジェームス・キャグニー
軍医長 / ウィリアム・パウエル
パルヴァー / ジャック・レモン
アン / ベェツィ・パーマー
ダウディ / ワード・ボンド
ステファノウスキー / ハリー・ケリー・ジュニア
ブックサー / パット・ウェイン
レバー / ニック・アダムス
日本公開: 1955年
製作国: アメリカ ワーナー作品
配給: ワーナー・ブラザース
あらすじとコメント
引き続きジョン・フォード監督作。ただし、病気で途中降板し、変わってマーヴィン・ルロイが継投した作品。
1945年、太平洋上のとある小島。時は、第二次大戦末期。アメリカ軍は沖縄に上陸し、激しい戦いを続けていたが、ここは実にのどかな場所であった。
そこに米国海軍の貨物輸送船、通称“ボロバケツ”号がいた。艦長(ジェームス・キャグニー)は、自室前にあるヤシの木に朝晩水をやるのが至上の喜びにして、偏屈の極みという嫌な男。そんな艦長を毛嫌いしている部下たちには軍医長(ウィリム・パウエル)、パルヴァー少尉(ジャック・レモン)などが居たが、特に最前線で活動したいと願うロバーツ中尉(ヘンリー・フォンダ)は、何度も転属願いを潰した艦長に嫌悪感さえ覚えていた。
そんなある日、若い乗組員たちが島の野戦病院に転属してきた美人揃いの看護師たちのシャワーを覗いて大騒ぎになる。
確かに何の刺激もなく過す部下たちを不憫に思ったパルヴァー少尉は、理由をつけてひとりの看護師を艦に招待したことから・・・
戦時下を舞台にした、いかにもアメリカらしいコメディの佳作。
原作は小説で、それをフランク・ニュージェントと、以前、ここで扱った「ピクニック」(1955)の監督ジョシア・ローガンが戯曲化しブロードウエィで大ヒットした作品の映画化である。
その舞台で、4年間、1600回も、ずっと主役を演じ続けたのが名優ヘンリー・フォンダ。つまり、完全に役を理解したキャスティングである。
映画では、そんな完璧な主役に対して、実に興味深い助演陣を配した。偏屈な艦長にギャング映画のドン、ジェームス・キャグニー。彼はミュージカルまでこなす芸達者であるが、コメディも実に上手い役者だ。しかも、かなりオーバー・アクトで役を強調している。
そして、若く、どこか飄々としたジャック・レモン。大好きな俳優のひとりで、彼自身、戦時中は役柄同様、海軍少尉だった。本作の前年に映画デビューし、この映画で見事アカデミー助演男優賞を受賞した。以後の活躍は、コメディからシリアスなものまで、ご存知の方も多いかと思う。
その逆に、本作が遺作となった、船医長役を演じたヴェテラン、ウィリアム・パウエル。彼は「巨星ジークフェルド」(1936)や、ハードボイルド作家ダシール・ハメット原作の探偵夫婦が活躍する「影なき男」(1934~)シリーズの主役など、二枚目で鳴らした俳優。
そんな新旧の役者たちが嬉々としてそれぞれの役を楽しんで演じている。その他にも、ジ ョン・フォード一家の役者たちも数多く出演していて賑やかだ。
ただ、フォード監督が病気で途中降板し、リリーフとして登板したのが、「哀愁」(1940)など、どちらかというとメロドラマが得意だったマーヴィン・ルロイ。
水と油とも思える監督だが、中々どうして、上手く繋いであり、どこが双方の監督の撮った場面か解りづらい。
こういった二人の共同監督による作品は、双方の癖が如実にでて失敗することが多いが、本作は成功している方だろう。
日本でもDVDが発売されていたので、再見したが、今見るとやはりランニング・タイムの長さや、時代性を感じた。考えたら、自分が初めて本作を見たのは、カットされたTVでの吹替え放送版だった。
主役のフォンダは、これぞ適役の小山田宗徳でなく、嵯川哲朗だったが、キャグニーとレモンを、近石真介と愛川欽也というベストのアテレコ。そちらでの印象が強烈だったのかなと思い起こした。
残念ながら、DVDには吹替え版が入っていない。それでも、懐かしく感じた。
スタッフにしろ役者にしろ、当時は、才能がある人間が数多くいたんだなと感慨に耽った。