スタッフ
監督: ジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン
製作: アーサー・フリード
脚本: アドルフ・グリーン、ベティ・コムデン
撮影: ハロルド・ロッセン
音楽: レナード・バーンスタイン
キャスト
ギャビー / ジーン・ケリー
チップ / フランク・シナトラ
ブランヒルデ / ベティ・ギャレット
クレア / アン・ミラー
オジー / ジュールス・マンシン
アイヴィー / ヴェラ・エレン
ディロウスカ女史 / フローレンス・ベイツ
ルーシー / アリス・ピアース
教授 / ジョージ・ミーダー
日本公開: 1951年
製作国: アメリカ MGM作品
配給: MGM
あらすじとコメント
麻薬中毒患者役でアカデミー主演男優賞を獲ったフランク・シナトラ。そんな彼が出演した明るく楽しいミュージカル。
アメリカ、ニューヨーク。早朝6時。湾内に停泊中の軍艦から、水兵たちが飛びだしてきた。彼らに24時間の上陸許可が降りたからだ。
そんな中に、ギャビー(ジーン・ケリー)、チップ(フランク・シナトラ)、オジー(ジュールス・マンシン)の姿があった。彼らは、初めてのニューヨークで、たった一日だが、大都会の休暇を満喫しようと意気込んでいた。しかし、当然、観光だけではない。三人とも、都会の女性と楽しく過したいと願っていたのだ。
そんな三人は初めて乗った地下鉄で、今月の『ミス・地下鉄』のポスターを見つける。真っ先に反応したのはギャビーだ。いかにも都会の匂いを感じさせ、芸術やら音楽に興味があるというプロフィールに目がいきなりハート・マークになった。よし、俺は絶対に彼女と出会うぞ、と。しかし、他の二人は、こんな広いニューヨークで会えるはずないと笑った。
だが、彼らが降りた駅の改札で、写真撮影をしていた『ミス・地下鉄』こと、アイヴィー(ヴェラ・エレン)に出くわしてしまって・・・
水兵たちがパワフルに、そして劇的に過すたった一日の物語。
いかにもウェルメイドな典型的MGMミュージカル作品である。
ただし、ある意味、歴史的な作品でもある。それは、完全スタジオ主義で製作されていたミュージカル映画が、初めてロケを行った作品であるから。
冒頭、朝もやのNYが写しだされ、港湾労働者がたった一人、仕事に来るという静かなシーンから始まる。その後、いきなり、軍艦から一日の上陸許可を貰った水兵たちが大騒ぎしながら飛びだしてくるという、『静』から『動』への転換で幕を上げる。そして、有名な『ミューヨーク、ニューヨーク』の楽曲を歌い踊る主人公の三人組。何とも明るくて楽しいナンバーだ。
ただし、ライザ・ミネリとロバート・デ・ニーロの「ニューヨーク、ニューヨーク」(1977)とは違う曲である。
そこで、NYロケの威力が発揮される。フルセットとは違い、ホンモノの背景の中で唄い踊る。このシーンは、やはりミュージカル映画の歴史を変えた「ウエストサイド物語」(1961)に、確実に影響を与えていると感じる。ただし、全編をロケで撮れるはずもないので、以後はスタジオ撮影に変わる。
オハナシは、単純。三人の水兵たちが、それぞれ、運命的な出会いをして、24時間の休暇を楽しもうとする。ただし、主役のケリーだけは別。すれ違いドラマ風な展開となる。
NYで、すれ違いドラマ。しかも本作でキー・ポイントとなるのは『エンパイア・ステート・ビル』である。勘の良いオールド映画ファンなら、ハタと膝を打つだろう。ここでも扱ったメロドラマの秀作「めぐり逢い」(1957)と同じ設定である。
ただし、本作の方が、先に製作されているし、健全なるミュージカル。いきなり唄って踊る展開になる。
そのメリハリがミュージカル映画の好き嫌いの分かれ目でもあるのだが。健全なお色気あり、楽しい会話ありと、古き良き時代を感じさせる作劇。
特に脚本のアドルフ・グリーンとベティ・コムデン夫妻の洒脱な台詞には思わず笑ってしまう。ただし、当時を知っていればという、オチがつくのだが。
こういった点が、どうしても逆に時代性を感じてしまう。出演しているシナトラと、当時噂のあったエヴァ・ガードナーのことが会話にでてきたり、博物館で恐竜ダイナサウルスの化石が壊れたと聞いて、有名女優だったダイナ・ショアが壊れたと聞き間違う警官など、当時としては爆笑だったに違いない。
それにしても健全で大らかな映画である。