スタッフ
監督: ジョン・スタージェス
製作: ウィリアム・ホークス
原作: マーヴィン・H・アルバート
脚本: ウィリアム・バワーズ
撮影: ロバート・サーティス
キャスト
ウェイド / ロバート・テイラー
ホリスター / リチャード・ウィドマーク
ペギー / パトリシア・オーウェン
オルテロ / ロバート・ミドルトン
レミー / ヘンリー・シルヴァ
ウェクスラー / ディフォレスト・ケリー
騎兵隊中尉 / バート・ダグラス
バーク / エディ・ファイアストーン
エイヴェリィ / ロイ・エンジェル
日本公開: 1958年
製作国: MGM作品
配給: MGM
あらすじとコメント
前回の「鷲は舞いおりた」の監督ジョン・スタージェス。戦争モノやアクションが得意だが、初期は何といっても西部劇。その中でも、好きな一本。
アメリカ、ニュー・メキシコ近く。とある町の保安官事務所の牢屋に捕えられているホリスター(リチャード・ウィドマーク)がいた。
深夜、ウェイド(ロバート・テイラー)が、馬を牽きながら、ひとりでやって来ると、事務所に忍び入り、保安官補を脅して、ホリスターを助けだした。「これで借りは返したな」。
しかし、運悪く別な保安官が帰って来た。するとホリスターは躊躇わず、射殺してしまう。驚くウェイドだが、仕方なく連れてきた馬を渡すと、自分は夜陰に乗じて消えた。
翌朝、ウェイドが自分の町に戻ると、同僚からホリスターが脱獄したと告げられる。
何と、ウェイドは保安官だったのだ・・・
金、友情、裏切りといった筋書きで描く定番西部劇の佳作。
「OK牧場の決斗」(1957)、「ガンヒルの決斗」(1959)と並び、スタージェス監督による『決斗三部作』と呼ばれたうちの一本である。
今では保安官になった主人公だが、以前は悪党で、助けだした旧友と一緒に奪った大金を、とある事情から持ち逃げして、どこかに隠しているという設定が明かされる。
そして、助けだされた旧友は、当然、その大金が欲しいので、主人公と彼の婚約者を拉致し、現在の仲間と一緒に、隠し場所まで案内させようとする。
お気付きかもしれないが、ハッキリ言って、筋書きは、かなりの疑問符が付く。
独り占めにした大金を隠したまま保安官になるような男が主人公だ。しかも、以前に借りた義理を返すために、どんな性格かを知り抜いている旧友を助け、それで、感激した相手は、どうも有り難う、これで義理の切った張ったはジ・エンドにして、ハイさようなら、と相成ると信じていること自体がおかしい。
確かに、保安官と言えども、単なる善人ではないという言動もあるし、どうやって、旧友が居場所を突き止めたかといった説明もちゃんと登場はする。
しかし、スタート自体が間違いだろう、と突っ込みを入れたくなる。
ところが、それでも面白いのだ。それは、大金の隠し場所まで連行する過程での互いの駆け引きや、インディアンの襲撃といった、次々と起きる難関をテンポ良く且つ、実にサスペンスフルに捌く、監督の力量あってのことだからである。
しかし、本作で一番の収穫であり、見事なのは敵役を演じるリチャード・ウィドマークの圧倒的な存在感である。
彼なしには、本作は存在しえなかったであろうと感じる。決して二枚目ではないし、そもそもが極悪人役で強烈なる俳優デビューをした男。しかし、それだけなく、演技もしっかりとしており、存在感バツグンの俳優である。
一方、主役であるロバート・テイラーは二枚目として人気のあった俳優だが、大根役者にして、歳を重ねてからは、まったくパッとしない、『昔の名前ででいます』てな状態であった。
当然、本作でも、その存在感の違い、というか、俳優としての『格』の違いがハッキリとでている。
本作がリバイバル上映された時にはウィドマークが主役のように公開されたほどである。
本作を見ると、さもありなんと感じるだろう。事実、主役より頭も切れそうだし、極悪人に見えて、実は主人公より義理人情に厚い存在なのだ。それを、ふてぶてしく演じる妙味。チャーミングとさえ感じた。
脇役が主役を喰うという典型的な作品であり、監督の力量と妙味を感じさせる娯楽作の一本である。