スタッフ
監督:ピーター・イェーツ
製作:ハル・ランダーズ、ボビー・ロバーツ
脚本:ウィリアム・ゴールドマン
撮影:エド・ブラウン
音楽:クィンシー・ジョーンズ
キャスト
ドートマンダー / ロバート・レッドフォード
ケルプ / ジョージ・シーガル
グリーンバーグ / ゼロ・モステル
アラン / ポール・サンド
マーチ / ロン・リーヴマン
マムーザ博士 / モーゼス・ガン
シス / トゥーポ・スウォープ
フーヴァー署長 / ウィリアム・レッドフォード
ウォーデン / グラハム・ジャーヴィス
日本公開: 1972年
製作国: アメリカ 20世紀フォックス作品
配給: 20世紀フォックス
あらすじとコメント
前回がアイディア勝利のコメディ・タッチの犯罪モノ。今回は展開がバツグンに面白い泥棒モノにしてみた。
アメリカ、ニューヨーク。4年の刑期を終えドートマンダー(ロバート・レッドフォード)が釈放された。迎えに来たのは姉の夫ケルプ(ジョージ・シーガル)。ケルプは表向き鍵屋だが、実は金庫破りの名人。
彼はドートマンダーにいきなりデカいヤマを持ちかける。現在、ブルクッリン博物館に展示されている『サハリ・ストーン』と呼ばれる巨大ダイヤを盗みだすと言うのだ。訝るドートマンダーにケルプは続ける。「これは、俺のアイディアじゃない。スポンサーがいるんだ」それは、ダイヤを所有する国とは別に、本来の所有者だと名乗るアフリカ某国の大使アムーザ博士(モーゼス・ガン)だというのだ。だが、次に逮捕されれば無期懲役になるドートマンダーは躊躇するが、結局ひとり当たり2万5千ドルという高額な報酬ゆえに引き受けてしまう。作戦を立てたドートマンダーは運転のプロ、マーチ(ロン・リーヴマン)と学生運動くずれのアラン(ポール・サンド)を仲間に引き入れた。訓練を繰り返し、都度、軌道修正をしながら計画を決行。
しかし、無事盗みだそうとしたとき、想定外の事態が起き、ドートマンダーとケルプは何とか逃げおおせたが、慌ててダイヤを呑み込んだアランだけが逮捕されてしまった。困り果てた彼らの元にアランの父親で弁護士のグリーンバーグ(ゼロ・モステル)が現れる。
バカでも息子は息子だ。何とか収監先の刑務所から連れ戻して欲しい・・・
犯罪コメディとしては白眉の仕上がりの一品。
登場人物は主人公を除いて、プロとはいえ、どこか抜けている面々。それに引換え、大使や弁護士といったタダモノではない人生のヴェテラン組が絶妙に絡んでくる。
ストーリィの整合性やサスペンスの連続を期待する御仁には、有り得ないだろと突っ込みを入れたくなる展開。しかし、コメディだ。その、有り得ないだろ、という展開が絶妙に面白いのだ。
そもそもダイヤを博物館から盗みだす計画からして、おかしさ全開だ。博物館の守衛たちの注意をダイヤから離すために爆発騒ぎを起こす。しかし、爆発自体は最小、効果音は最大と難題を突きつける主役に何とか対応しようする、どこかピンボケな爆弾担当とのやりとりから、実際にダイヤを盗みだす場面へと笑いが連鎖していく。
だが、こういうコメディは過去にもあった。本作が俄然おかしさを全開にしていくのが、ダイヤを呑み込んだ仲間を救いだすという展開から。
どこか間抜けな面々は刑務所に収監されている仲間をどう救いだすのか。当然、トンネルを掘ってとか、看守を手なずけてとかの時間はない。そして思いつくのが強引な力技。
何とか成功するものの、単純にそれでは済まない。当然、ダイヤは彼が所持しているはずもなく、収監前に取調べを受けた警察署に隠したことが判明。驚く一同。何と、刑務所の次は警察署である。仕方なく、彼らは方策を考える。しかし、どこか抜けた面々だ。結局、考えつくのは、またもや力技。
ここまでくると痛快としかいいようがない。コメディはこうでなくちゃと膝を打った。
それからも次から次へとおかしな展開が用意され、物語も二転三転していく。おいおいラストはどうなるの、と思っているとさすがのハリウッド映画。
また、本作を見た当時、一発で覚えた台詞がある。『アフガニスタン・バナナスタンド』だ。一体、何の意味があるのか。劇中で主人公も同じことを尋く。しかし、その謎は解けない。ただ、その台詞を片思いの女性の耳元で囁きたいなと当時、思ったものだ。
気弱な警察署長や謎の催眠術師などのサブキャラも充実して楽しめるし、重くないジャズを軽快に流すクィンシー・ジョーンズの音楽もゴキゲン。
お気楽に見て楽しめる、気分展開にはもってこいの作品。