梅雨時期なので、雨に関する都々逸を一席。
「ひとりで差したるから傘ならば 片袖濡れようはずがない」
今では、とんと聞かなくなった『相合傘』。昔は男女が並んで歩くだけで揶揄されたらしい。そんな時代、相合傘は立派な言訳だったのだろうか。身を寄せ合うようにして、しっとりと雨模様を楽しむ。そういう相手がいない寂しさを表現している。
いつの頃からだろうか、ドラマやCMでは突然降りだした雨に、駅まで家族が傘を持って出迎えにいくという場面が増えた。しかし、相合傘で帰るのではなく、各々が別個の傘を持つ。どこか『家族』より『個』が優先される印象を持ったものだ。
しかも今はビニール傘が100円で買える時代。相手を気遣って濡れながら歩くよりも、もしくはもっと優しい気持ちで、人の手を煩わせるより、自分で買った方が安いこともあるのだろうか。
湿気にむせぶ時期に、どこかドライさを感じる。