「TASPO」カードによるタバコ販売がスタートした。それがないと自販機で買えないというやつである。
自分の実家はタバコ屋なのだが、年老いた母がひとりで住んでいるので、ずっと店頭は閉切りにして自販機のみの営業だった。だが、メディアが色々と放送したおかげで、余程不安を感じたらしく、自分に救援を要請してきた。買出しや病院に行く間だけでも、店を開けて、番をしてくれと。
面倒臭いなとも思ったが、暇を持て余していることだし、しかも歩いて20分とかからない距離である。
で、今週はずっと実家で店番。案の定、施行日からは自販機で一度、呆然としてから、店頭に買いに来る人が多い。しかも、日頃なら口もきかないであろう種々雑多な人たちだ。
やってみて、案外面白いと感じた。かつてスーパーやコンビニでは、ことが済まなかった時代の小売業は対面販売が当り前だった。下町という場所柄かもしれないが、買い求める店も大体決まっていたことや、祖父母が常連の顔を見ただけで、買うタバコを掴んでいた姿を思い出した。
「これを機に禁煙しなきゃ」とか、「バカ息子改心して帰るか」と近所のじい様に笑われたり、愚痴や文句を言われたり。
今まで閉切りだったシャッターを開けただけで、小さな居間から続く店先のガラス戸越しに、雨の湿り気から眩しい西陽といった天気の移ろいや、人との関わりなど、違う世界と繋がった。