先立ての日曜の昼間、知人の舞台を中野まで観に行った後、最近ご無沙汰の三河島のもつ焼き屋に顔をだそうと考えた。電車を二度ほど乗り換え、ほとんど地元からでない自分としては小旅行気分で到着。
ところが、早過ぎたのか店が開いていない。さてさて、困ったなと考えながら、しばらく近所を散策していたら、見知らぬ路地裏に、何かを訴えてくる古臭いもつ焼き屋を発見。色褪せた暖簾の下から、店内を垣間見た。口開け直後だからか、誰も客がいない。自分の嗅覚を信じて入った。
結果、当りだった。氷が入っていない酎ハイが300円、もつ焼きが一本70円。不器用だが、実直そうな老夫婦が切り盛りしていた。酒屋や客から開店祝いに贈られたのであろう額装がヤニまみれで燻み、塗り壁は削げ落ちてたりと、小綺麗とは呼べない店。しかし、裕福とは程遠かったに違いない呑兵衛たちの精霊が宿っていて落ち着いた。
見事に旨いもつ焼きを頬張りながら、長期に渡る経験に裏打ちされた所作が一々、丁寧なオヤジさんを見つめ、後、何年持つだろうかと考えた。汚くて安い店。今の自分には等身大であろう。
人には紹介しづらいが、文句なく我が『心の酒場』に登録した。