スタッフ
監督:デルマー・ディビス
製作:マーティン・ジュロー
脚本:ウェンデル・メイズ、ハルステッド・ウェルズ
撮影:テッド・マッコード
音楽:マックス・スタイナー
キャスト
フレイル / ゲーリー・クーパー
エリザベス / マリア・シェル
ブランテ / カール・マルデン
ルーン / ベン・ピアッツア
フラーンス / カール・スウェンソン
グラッブ / ジョージ・C・スコット
エドナ / ヴァージニア・グレッグ
ワンダー / キング・ドノヴァン
猟師 / ウィリアム・B・ベネディクト
日本公開: 1959年
製作国: アメリカ ザ・バロウダ・プロ作品
配給: ワーナー・ブラザース
あらすじとコメント
ハリウッドの大スターであったゲーリー・クーパー。前回同様、彼が主演した西部劇にする。影とクセのある医師という複雑な設定で進行する一味違った作品。
アメリカ、モンタナ
金脈探しで賑わう場所に医師のフレイル(ゲーリー・クーパー)がやって来て、古い家を格安で買い取った。そこは小さな町を見下ろす丘にあり、診療所を開業しようとしているらしいとの噂が拡がった。
ある晩、彼は他人の金を盗み、銃で撃たれた青年ルーン(ベン・ピアッツァ)を助ける。撃ったのは金脈探しのプランテ(カール・マルデン)だが、どうやらはっきりと相手の顔は見ていないようだ。そこでバロウズは犯人はお前だと言うことも簡単だと笑顔を浮かべ、それが嫌なら助手になれと命じる。渋々ながら下働きの身となるルーン。
しばらくすると駅馬車が野盗に襲われる事件が起き、自警団が編成された。唯一、生存していたのはスイスから新天地を求め渡米してきたエリザベス(マリア・シェル)だが、ひどい日射病に罹っていて・・・
訳アリ医師の横暴と脆弱さを描く異色の西部劇。
医師ながら銃の腕は抜群で、荒くれ者たちも容易に手を出せない。
そんな主人公の過去を知っている男が、その件にふれると烈火のごとく怒り、射殺寸前までいってしまう。かなりのトラウマを抱えているようだ。
そこに新天地を求めて父娘で移民してきたが襲撃で重傷を負い、たった独りだけ生残った美女が絡んでくる。
主人公は懸命に治療に専念するが、相手が美人ゆえに町の荒くれ者や、ひいてはご婦人たちまでが問題が起きないかと主人公を疑心暗鬼の眼で見る。
訳アリで盗人の若者を脅迫して懐柔したり、博打で金品を平気で巻き上げるという単純な正義感ではない主人公ではある。
ヒロインは献身的な看護をしてくれる主人公に惹かれて行くが、逆にヒロインから近付かれると拒絶するという、何とも嫌な性格。
要は素直ではないだ。それは過去の黒歴史ゆえだろうが。
邪険にされるヒロインだが行く場所もないと、何とその地に居残って金脈探しを始める。
主人公は知らぬ顔をするが、一緒に金を探そうと言いだすのが盗人青年と、彼を撃った荒くれ者。この三人が一緒に寝泊まりすれば一筋縄ではいかないぞと想像に難くないが、それでも主人公のスタンスは微妙なままだ。
大したアクションもなく、ブレる主人公と頑固なヒロインの関係性がどうにもモヤモヤする進行。
苦悩する複雑な役柄を大スターのクーパーが演じ、それなりに見ては行ける。どういう落しどころに持っていくのかと思っていたら、終盤でタイトルの意味が分かって来る。
どこかクーパー主演のリアリズム西部劇の有名作「真昼の決闘」(1952)の設定に通じるものがあるが、結局は孫悟空とお釈迦様の関係性に辿り着くイメージが勝る。
単純なヒーローはもう御免だとばかりに苦悩するクーパーの演技を見るのが正統的鑑賞法だろう。