群衆 – MEET JOHN DOE(1941年)

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スタッフ
監督:フランク・キャプラ
製作:フランク・キャプラ
脚本:ロバート・リスキン
撮影:ジョージ・バーンズ
音楽:ディミトリ・ティオムキン

キャスト
ウィロビー / ゲーリー・クーパー
アン / バーバラ・スタンウィック
ノートン / エドワード・アーノルド
“大佐” / ウォルター・ブレナン
コンネル / ジェームズ・グリーソン
ラヴェット / ジーン・ロックハート
ミッチェル婦人 / スプリング・バイイントン
ビーニィ / アーヴィング・ベーコン
ハンセン / レジス・トゥーミィ

日本公開: 1951年
製作国: アメリカ フランク・キャプラ・プロ作品
配給: NCC


あらすじとコメント

ゲーリー・クーパー主演作。今回は社会派ドラマで、監督は「アメリカの良心」と呼ばれたフランク・キャプラ。コメディ要素の少ない正攻法で、ある男の波乱の人生を描く作品。

アメリカ、カリフォルニア

とある地方新聞社が金持ちノートン(エドワード・アーノルド)に買収され、大幅なリストラが実行された。その中に女性記者のアン(バーバラ・スタンウィック)がいた。

晴天の霹靂だが、発行部数を伸ばすための扇動的な記事が書けないとの理由からだ。怒った彼女は置き土産とばかり『ジョン・ドーと名乗る男が社会の不平等に抗議するためクリスマス・イブに市庁舎から飛び降り自殺をすると予告』という捏造記事を書いた。ところがそれが世間から注目され、職を斡旋するとか、寄付をしたいという声が届き始めた。それがノートンの目に留まり、これは大きなキャンペーンを張れるとニセのドーをでっち上げろと厳命されるアン。

不景気の世の中で、我こそジョン・ドーだと浮浪者たちが新聞社に集まって来た。その中に元マイナー・リーグの投手ウィロビー(ゲーリー・クーパー)もいて・・・

浮浪者が市民運動の指導者に祭り上げられ翻弄されるドラマ。

メジャー・リーグ昇格直前、ひじを痛めて廃業した主人公。それを自分らに都合良く利用しようとする新聞社側。

女性記者も首が繋がり、そこで急に正義感を発揮し「隣人を愛せ」という感動的なスローガンを掲げて演説させる。

結果、彼女が名スピーチ・ライターとなりコンビで活動する展開と相成っていく。

当初こそ投げやりな態度だったが、いきなり有名人に祭り上げられ自分を見失っていく主人公。彼女に対する愛情が芽生えたからでもある。

しかし、大前提が『ニセ者』であるという良心も芽生えるからややこしくなる。

ヒロインは更に「ジョン・ドー」とは『良心を持つ市井の人々の総称』としたことから、予想しない場所で草の根運動的に全国に広がり、信じ難いムーヴメントとなっていく。当然、社会風潮に発展していき、時代の流れをも変えてしまい政治家や金持ちたちが恐怖心を抱くように。

とてもキャプラらしい、「清貧こそ富める者」を大上段に謳い、持ち上げる設定と進行。しかも、「クリスマスに自殺」という設定自体、キャプラの名作「素晴らしき哉、人生!」(1946)、「ポケット一杯の幸福」(1961)と同じようにクリスマスには奇跡が起きるぞと予告している。

当然、途中で大きな挫折や金満家らの妨害が起き、絶望に追いやられていく展開が待ち受ける。これもいかにものキャプラ調である。

それでもラストは予定調和であるのでご安心を。出演者も「オペラハット」(1936)と本作の二本しか出演してないゲーリー・クーパーが、本来ならキャプラ一家のジェームス・スチュワートの役だろと言われないように熱演。

ヒロインのバーバラ・スタンウィクはキャプラ一家で万全の演技だし、新経営者のジャック・アーノルドもいつもの貫禄の役どころで盤石。

そんな中でも、初めから少額の金で偽者になんぞなるなと諦念しつつ見守る浮浪者仲間のウォルター・ブレナンが光を放つ。この手の飄々としながら真実を見抜いている小市民を演じさせると他の追従を許さぬ存在である。

他にもチョイ役ながら、どの登場人物も見事にその役の背景が浮かぶ存在感で、アメリカとはなんと俳優が揃っているのかと驚嘆した。

他の作品で見掛けないような俳優にもかかわらず、誰もが誰とも被らず、そのキャラクターとしての光を発するので相乗効果で盛り上げてくれる。

こういう役者の起用法もキャプラの得意芸でもある。コメディ色より正統社会派ドラマとしての印象が勝るが、それでも流石のキャプラである。

余談雑談 2023年8月12日
御巣鷹山事故から丁度38年。 当時を知る一人としては、どうしてもこの時期、記憶を呼び起こされる。 以前にも書いたが、扇動的報道云々よりも、当日、羽田空港で他社のグランドスタッフをしていた地元の後輩女性、その彼氏だったフリーの映像カメラマン、