スタッフ
監督:スタンリー・クレイマー
製作:スタンリー・クレイマー
脚本:アビー・マン
撮影:アーネスト・ラズロ
音楽:アーネスト・ゴールド
キャスト
ヘイウッド判事 / スペンサー・トレーシー
ヤニング / バート・ランカスター
ローソン大佐 / リチャード・ウィドマーク
ペータースン / モンゴメリー・クリフト
ベルトホルト夫人 / マレーネ・ディートリッヒ
ロルフ / マクシミリアン・シェル
イレーネ / ジュディ・ガーランド
バイヤース大尉 / ウィリアム・シャトナー
バーケット議員 / エドワード・ビンズ
日本公開: 1962年
製作国: アメリカ ロックスロム・フィルム作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
引き続き名優スペンサー・トレーシー主演作。実際に行われた第二次大戦後の戦犯裁判を重厚に描いた問題作。
ドイツ、ニュールンベルグ
1945年11月、ドイツの戦争犯罪を裁く国際軍事法廷が開廷された。裁判長はアメリカ地方判事ヘイウッド(スペンサー・トレーシー)で、被告はナチスに貢献した裁判官三名と、世界的に有名だった法学者で元司法大臣ヤニング(バート・ランカスター)。検察官は米軍のローソン大佐(リチャード・ウィドマーク)で弁護人はヤニングの教え子ロルフ(マクシミリアン・シェル)である。
検察側はナチスに貢献しその残虐性を断罪したが、弁護人は被告全員が有罪であるなら、戦争に加担したドイツ人すべてが同罪であると激しく主張。
そして罪状認否が行われると元裁判官3名は無罪を主張したが、ヤニングだけは返答を留保した・・・
実際にあった軍事裁判を描く重厚なるドラマ。
既にナチス指導部の高官らのA級戦犯裁判が終わり、続いて司法官、外交官、実業家らの第2回裁判が行われた。
本作はその中の司法官に対する裁判を描いたもの。つまり衆人の興味は薄れていた裁判でもある。しかも本裁判中にベルリンを封鎖し東西冷戦が始まって行く時期。
映画としては検察弁護双方が被告人たちに対し、迫害されたとされるユダヤ系市民らを証人席に召喚し、触れられたくない過去や隠しておきたい性格をも暴露され、判決が言い渡されるまでを描いていく。
主軸は、何故法学者のみが罪状認否を留保したのかであり、それだけでは妙味に欠けると思ったのか、証人側のサイド・ストーリーや、裁判長の法学者への興味から独自調査などを盛り込み、結果、3時間半近い超大作となっている。
本当にスタンリー・クレイマー監督は長尺の大作ばかりという印象。本作では7大スターを出演させアクションや戦争場面など一切なしで押し切るから、かなりの力技だとも感じた。
ただし、そのスターたちがそれなりの名演を見せるから興味深いのである。当初、監督は裁判長役にバート・ランカスターをキャスティングしたが、ランカスターから被告側を熱望され入れ替わったとも聞く。
確かに若干の特殊メイクで実に抑えた演技を披露しているし、主役のトレーシーも正面から組んでいると感じる。その中でも検察側の軍人を演じたリチャード・ウィドマークの、まるで悪役のようなイメージを与える劇場型の演技が印象に残る。
軍事戦犯裁判とは戦勝国が、ほぼ一方的に敗戦国を断罪するイメージがあり、それは日本における「東京裁判」にも相通じるものがあったと思う。
日独双方の軍事裁判作品を見ると連合国側に微妙な温度差も感じ、何が正義なのかと不安になる。
ただ、本裁判に関しては判決とその後の事実が明らかにされているので、何ともやるせない気分にもさせられる。