スタッフ
監督:マーヴィン・ルロイ
製作:マーヴィン・ルロイ
脚本:ジョン・リー・メイヒン
撮影:ハル・ロッソン
音楽:アレックス・ノース
キャスト
ローダ / パティ・マコーマック
クリスティーン / ナンシー・ケリー
リロイ / ヘンリー・ジョーンズ
ホーデンス / アイリーン・ヘッカート
ローダの祖父 / ポール・フィックス
モニカ / イヴリン・ヴァーデン
ベンマーク / ウィリアム・ホッパー
タスカー / ジョージ・クラーク
モニカの兄 / ジェシー・ホワイト
日本公開: 1957年
製作国: アメリカ ワーナー作品
配給: ワーナー
あらすじとコメント
今回も少女が主役だ。「かもめの城」(1965)は、いびつで異常さが漂う人間ドラマだったが、今回は「おぞましさ」が支配するスリラーの佳作。
アメリカ、某所
クリスティーン(ナンシー・ケリー)と夫である空軍大佐ベンマーク(ウィリアム・ホッパー)の間には8歳になる一人娘のローダ(パティ・マコーマック)がおり、幸せを絵に描いた中流家庭であった。
夫は仕事柄家を空けることも多く、今回も長期出張でワシントンに行くことが決まっていた。そんな夫が留守でもローダを盲目的に溺愛するお節介で詮索好きな、彼女らに家を貸す家主夫人もいるからクリスティーンもひと安心だ。それに今日は娘の遠足でもあり沼のある現地まで連れて行った。
ところが数時間後、その遠足先で娘と仲が悪かった男子が沼にハマって死亡する事故が起きて・・・
『遺伝』の可能性を絡めたおぞましいスリラーの佳作。
いたいけながら妙に大人びてもいる『人たらし』の8歳になる少女。同級生の男児にテストで負けてメダルが貰えなかったのが、どうにも許せなくて文句をタラタラを言う冒頭。
何とも嫌な印象をこちらに与えてくるし、家に出入りする掃除人も性悪そうで、娘に対してヘンな眼で絡んでくる。
健全そうな母親が亭主の留守中に何やら問題に巻き込まれるのかと、兎に角どうにも様子がおかしいと観る側に感じさせる序盤の進行は面白い。
そしてメダルを貰った男児が遠足先で死んでしまい、周囲の大人らは娘が何やら絡んでいるかもという疑念を持っている展開になっていく。
母親の父は有名な作家で、家主夫人の友人に心理学者や犯罪小説家がいるのも、当然、その後の展開に絡んでくるなと推察させる。
しかも、ここに引っ越して来る前には、やはり娘しかいないときに上に住んでいた老婆が死亡する事故が起きていて、その老婆が所有し娘が欲しがっていたものがなぜが娘の部屋にあった。
もしやと母親も疑念を持つ。しかも母親自身も、実は自分は犯罪者の子供で、小説家の父は本当の親でなく何かしらの理由で養子として引き取られたのではとも疑っている。それが真実なら殺人者のDNAは遺伝するのか。
息詰まる心理サスペンスが連続し、真綿で首を締めてくる進行。様々な言動から娘が殺人、しかも複数人の、と思ったら、どういう行動にでるのか。
更に掃除の男もいわくあり気。そうなってくると気の良い家主夫人に対して、知ったかぶりをするくせに無知で、妙なヘイト感が渦巻いてもくる。
確かに大人だって色々なタイプがいる。マーヴイン・ルロイ監督の上手い作劇と進行で胃が痛くなってくる。
実は、割と早めに娘の素性が明かされるが、それ以降も別な心理スリラーとして飽きさせないのも妙味の一つ。
有名スターは出演していないが、母と娘役も熱演である。しかも母娘とも大袈裟な演技ゆえに、落ち着いて見ていけたのも事実。
これが静かに騒ぎ立てない演技で双方が押して来たら、本当に胃が痛くて嫌な気分に陥ったであろう。ここにアメリカ映画のある意味、良心が感じられる。
本作は大ヒット舞台劇の映画化であり、映画のラストはある意味、自主規制で変更になったらしい。
成程とも思う一方で、やはり宗教心に委ねるというか、逃げたとも感じさせてしまうのが残念。
それでも、しばらくは頭から離れない心理スリラーの佳作である。