スタッフ
監督:フィリップ・ド・ブロカ
製作:アラン・クレール、ハラウト・レイヒュブナー
脚本:フィリップ・ド・ブロカ
撮影:ヤノッシュ・ケンデ
音楽:シャルル・クール
キャスト
ボナール / クロード・リッシュ
フィリピ─ヌ / サロメ・ステヴナン
アルマンド / サミュエル・ラバルト
ミシェリーヌ / カトリーヌ・ジャコブ
ペルゴール / アンドレ・ペンヴルン
ジャンヌ / ローズ・ティエリー
スワール / イシュトヴァン・イグロディ
マルセル / ゾルタン・ゲラ
ヴェンダース / ゲルト・ブルクハルト
日本公開: 1997年
製作国: フランス アウグスト、カナル作品
配給: オンリー・ハーツ
あらすじとコメント
第二次大戦下で頑張る老人。今回は気難しい学者センセイが登場。絡むのは8歳の孫娘。アクションもあり、どこかファンタジー性をも秘めた作品。
フランス、パリ
第二次大戦後半。パリはドイツの占領下であり、連合軍はイタリアのローマへ進軍を開始していた時期。郊外に「パリ動植物園」があり、一応ドイツ軍の監視塔が設えてはあるが、実にのんびりとしている。そこの館長はボナール博士(クロード・リッシュ)で文句ばかり言うひねくれ者だ。
いよいよ冬休みに入り、寄宿学校にいるもうすぐ8歳になる孫娘フィリピーヌ(サロメ・ステヴナン)が父親に連れられてやって来た。孫娘も祖父の偏屈さ加減を知っており、招かれざる客だと認知している模様。一応、大人の対応で接しようとするが、どうにも上手く行かないボナール。そのことで孫の父親でもある息子と口論となり、息子は外出禁止令の時間に飛びだしていった。
しばらくするとその息子がドイツ軍に捕まったとの報が入る。流石に慌てたボナールはドイツ司令部に行くが、何とレジスタンス被害の報復者リストに入っていると聞かされ・・・
偏屈な老人と孫娘の関係を描くファンタジー性を取り入れたドラマ。
家族を含め人間にはさほど興味がない主人公。妻とは死別し、長く勤めるメイドと動植物園内で暮らしている。そこにはラクダやカバ、オラウータンなどの動物と熱帯性を含む多くの珍しい植物がある。
しかし、ときは戦時下でありエサや温室管理もままならぬ状況。そこに孫娘が来るが、父親である主人公の息子は口論の挙句出て行ってドイツ軍によって逮捕。そして何と彼の眼前で報復処刑されてしまう。
流石に自分の所為だと落ち込むが、孫には死んだと伝えたくない。そこで父親はレジスタンスの闘士でリーダーとして危険な任務に就いているから簡単には戻ってこられないと嘘を付く。その嘘がどんどん増長し、やがて英雄扱いさせていく主人公。
当然と言えば当然で、父親の真似ごとをしたいお転婆の一面を持つ孫娘に付き合って『レジスタンスごっこ』まで始める。それもエスカレートしていき、孫娘は夜中に独りで父親を探しに行ってホンモノのレジスタンスに保護される。
今度は、あなた方のリーダーである父親を知らないのかと言いだし、結果、頻繁にレジスタンスらが動植物園に出入りするようになり、嫌々ながら主人公も巻き込まれていく。
監督は「まぼろしの市街戦」(1967)というファンタジー性の色濃い反戦映画の秀作を輩出したフィリップ・ド・ブロカ。
本作もその流れが感じられる。何せ冒頭は雪の中ラクダが馬車を引くというファンタジーに満ちたシーンで始まる。その他にもカバの虫歯検診やら、知能の発達したオラウータンとの共演とか何とも微笑ましい場面が出てくる。園内に設置されたドイツ軍監視塔の兵士だって実に心優しいオジサンたちだ。
動物なり、南国植物が身近にあることで一種の癒しのある「楽園」と感じさせるのか。しかし、あくまで戦時下であり、戦争の恐怖といびつさも描かれている。
兎にも角にも父親の死を知らせたくない主人公の老人が心変わりし、やがて本当に英雄的行為に出て行く姿が滑稽でもあり、別な角度から見るとちゃんと英雄にも見えてくる。
あくまで「こまっしゃくれ」ながらもキュートな孫娘と良いコンビとして描かれていくから、何ともファンタジー性が匂い立つ。
戦争自体は一部の狂気じみた大人たちが始めるが、当初は『我関せず』という孤高の老人に小さな娘が絡み、そして何よりも戦争など無関係とばかりにノンビリと我が道を行く動物たちのそれぞれバラバラのリズム感が心地良く、ゆえに反戦映画として機能している。
地味な小品ながら、決してアメリカでは作れないと感じさせる「温もり」がある作品。