さざなみ – 45 YEARS(2015年)

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スタッフ
監督:アンドリュー・ヘイ
製作:トリスタン・ゴリバー
脚本:アンドリュー・ヘイ
撮影:ロル・クロウリー
編集:ジョナサン・アルバーツ

キャスト
ケイト / シャーロット・ランプリング
マーサー / トム・コートネイ
リナ / ジェラルディン・ジェームス
サリー / ドリー・ウェルズ
ジョージ / デヴィッド・シブリー
ワトキンス氏 / リチャード・カニンガム
クリス / リチャード・アレキサンダー
ジェイク / ルーファス・ライト
旅行代理店員 / ハンナ・チャーマーズ

日本公開: 2016年
製作国: イギリス フィルム4、BMI作品
配給: 彩プロ


あらすじとコメント

金の亡者になる老人から静かに老いを感じさせる夫婦のドラマにシフトする。イギリス製は同じだが、名優二名が円熟した演技を見せる心に起きる「揺れ」を描く、別な意味でこれもいかにもイギリスらしい作品。

イギリス、ノーフォーク

結婚して45年経つケイト(シャーロット・ランプリング)とマーサー(トム・コートネイ)夫妻。マーサーは工場を定年まで勤め上げた、これといって目立たなく静かなタイプ。妻もずっと寄り添ってきた。

そんな二人は結婚45周年パーティーを目前にし、小さいながら心温まる会にしようと話し合っていた。実は40周年の節目にと考えていたがマーサーが病で倒れたため延期になっていたのだ。そこにスイスの警察からマーサー宛に手紙が来る。何と50年前に彼と登山中に滑落し行方不明になった女性の遺体が氷河で発見されたというのだ。しかも当時の若いままの状態で。

足腰も弱り、妻の運転でしか町にも出られない自分だから行けはしないと呟く。しかし、彼女はその亭主の心の奥に何かが灯った気がして・・・

昔の恋人の存在から心に波風が立つ妻の揺れる心情を描く。

田舎町の更に郊外で犬と暮らす老夫婦。妻は元教師で子供はいない。お互いが長年連れ添って静かな余生を過ごしているようだ。特段、何も起きない日常が続いてきたと思わせる悠然とした時間が流れる。

結婚45周年を目前にして、不意に自分と知り合う前の夫に海外への同伴登山までしていた恋人がいたことを知る妻。しかも氷河の中で服装なども当時の姿のままで発見とも。だがそんな女性の存在を聞いたこともなく、亭主も昔の話だと話したがらない。

浮気とは縁遠い亭主に安寧な気持ちで過ごしてきたが、既に死んでいるにせよ、また自分と知り合う前の出来事だとしても昔の恋人の面影に気が行くことに動揺してしまう。

しかも亭主もどこか幻を追いかけ始め、妙に青春時代のセンチメンタルリズムに浸っていくような気配を感じる。これも長年連れ添ったからからこその直感であるが。

今まで自分の運転でしか行動しなかった亭主が、妙にバスで町まで出向いたり、犬の散歩に付き合ったりと、微妙な変化が生じ妻の心の振れ幅が増大する。

抑えきれぬ感情が渦巻き問い詰めると、いとも簡単に彼女が死ななければ結婚するつもりだった知るに至り、心が千々に乱れ始めるヒロイン。

亭主は半世紀前のままの『氷漬け』の恋人の幻影を忘れず、体力があればスイスまで遺体確認に行くのではないかと嫉妬心が芽生える。

結婚45年にして初めて覚える嫉妬と不安感。生身の相手より、昔の幻影にこそ心底傾くのが許せない。否や、もしかして亭主は本当にそこまでするのだろうか。

絶妙というより、当たり前に呼吸するような琴線の揺れ幅。そこもと男と女では違う。老齢になりながら『女』の部分が甦り、持って行き場のない不安に沈んでいく。

シャーロット・ランプリングのいかにもヨーロッパ系女優の絶妙な存在感と、浮薄な男性感情を漂わすトム・コートネイの受けに徹した演技は、観る側に忍耐と人生の勤勉さゆえの枯渇感が纏わり付く感覚を与えてくる。

どこかで死の諦念と生へのほのかな希望が滲む老夫婦。その微妙な機微のみが描かれ、静かで淡々とした作品にするヨーロッパならではの『余裕』は観る者を選ぶだろうか。

余談雑談 2024年2月17日
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