スタッフ
監督:クロード・ソーテ
製作:ジャン・ボルヴァリ、レイモン・ダノン、ロラン・ジラール
脚本:クロード・ソーテ、ジャン・ルー・ダバディ
撮影:ジャン・ボフェッティ
音楽:フィリップ・サルド
キャスト
ベラール / ミシェル・ピコリ
エレーヌ / ロミー・シュナイダー
カトリーヌ / レア・マッサリ
ベラールの父親 / ジェラール・ラルティゴ
救急隊員 / ボビー・ラポインテ
フランソワ / ジャン・ブィーズ
医者 / クロード・コンフォール
妻の恋人 / ジェリー・ブロウアー
ジョルジュ / ジャン・グラス
日本公開: 1971年
製作国: 仏、伊 スイス リラ・フィルム作品
配給: コロンビア
あらすじとコメント
「雨上がりの駅で」(1996)で痴ほう症の老人を演じたミシェル・ピコリ。味わい深い演技が得意のいかにもフランス系の俳優。その彼が主役を張った作品。あっけない人生の幕切れを描くドラマ。
フランス、パリ
建築家のベラール(ミシェル・ピコリ)は妻子と別居し、若いエレーヌ(ロミー・シュナイダー)と暮らしている。彼は離婚を考えながらエレーヌとアフリカのチュニジアに移ろうと考えていた。当然、エレーヌも乗り気だ。
しかし、妻はさることながら一人息子のことが気にかかるベラール。チュニジアに行く前に、一度成人した息子に会いに行くが・・・
身勝手な中年男の気の迷いと運命の儚さを描くドラマ。
冒頭、いきなり交通事故に主人公が巻き込まれる姿をスローモーションで、かなりしっかりと描きだす。
そんな主人公のここ数年の出来事がそれこそ走馬灯の如く蘇ってくる。
妻と息子と楽しく過ごした夏の小島での出来事、若い女性との偶然の出会い、その後の展開と確執などが描かれていくのだが、同時進行で事故に至る数日の出来事が描かれていく。些か行ったり来たりと混乱を生じさせる手法ではある。
主人公は建築家で誇り高く、それでいて独善的な男だと示してくる。一方の若い愛人は素直に寄り添う態だ。別居中の妻はどこか人生のヴェテランの雰囲気が漂い、逆に建築家の主人公の父はどこか頼りない。そんな登場人物に関わりながら、一番の関心事は成人した息子。
アフリカ行きが視野に入り、何とも気がかりで移住前にひと目会いに行ったことがミイラ取りがミイラになる展開となる。実際に再会すると、最後に母親抜きで思い出の夏の小島に行ってくれないかと頼まれると心が動き同意してしまう。それは愛人とのアフリカ行きを延期することにもなるのに。
実に優柔不断な中年男。それを知らされた愛人は当然、激怒。ならば別れると言いだすが、いざ独りになるとまた心が揺らぐ。
しかし、それこそがあちらでは普通の中年男の魅力と稚拙さだと。知的さを醸しながら揺れ動く男の機微を静かに演じるミシェル・ピコリの演技が渋い。喧嘩別れしたはずの愛人に留守電を入れ、今夜再会しようと言って、結果、再度良心の呵責に苛まれつつの運転中に事故に巻き込まれる。それがまるで神の采配であるかのように。
映画としては、いきなりスローモーションの事故場面から、関連トラックらのドライバー、野次馬の参集で現場が混乱していく中で主人公の独白が被さり始まる。
しかも全体の三分の一が田舎道での事故場面から警察の到着、救急車の到着遅れなどが、実に丁寧に描かれつつ、意識が遠ざかったり戻ったりする主人公の独白が被さる。
確かにこの事故場面はどうやって撮影したのかと思わせる迫力ある事故シーンと上手い編集で膝を打った。主役のピコリが本当に車内でシートベルトもつけずフロントガラスが割れ、それを受けながら横転し側道に落ち、更に大木に激突していく様を車内掲載カメラで映し続けるのだ。
十分に安全性を確保しつつ、計算し尽くされているのだろうが、本当に怪我をしなかったのかと不安にもなった。
ただし、やはり自分勝手な中年男の末路ゆえに、どこか冷めた目で見てしまった。
まさしくフランス映画らしい、妙な斜に構えた視点での進行は好き嫌いが別れるとも感じる。