ロジャー・コーマンが死んだ。98歳なら天寿を全うした部類に入るだろう。
映画製作者、監督として数多くの作品を世に送り出した。その中で監督ならフランシス・F・コッポラ、マーティン・スコセッシ、役者ならロバート・デ・ニーロやジャック・ニコルソンを輩出したのは有名な話である。
先見の明があるというか、見いだす能力に長けていたともいえる。また俳優として「羊たちの沈黙」(1991)、「アポロ13」(1995)等に出演している。
粗製乱造で数が多いからまぐれで才能を見いだしたとか、どれも映画史に残る大作など作らず、結局「B級映画の雄」とか「パクリの帝王」やら言われてきた。それでも、個人的には中々どうして捨て難いとか、何を仰る中には大好きな作品だってある。
彼の他にはやはりB級イメージが強いがコーネル・ワイルドも同類という気がする。両名とも小難しい映画ではなくあくまで娯楽作品のみに終始したイメージであり、ある意味『天晴れ』。
実はコーマンが存命していたことも知らなかったのだが、数週間前に面白いシンクロがあった。昨今はTVで観たい作品がなかったり、撮り溜めたストックからのチョイスはここの原稿書き用鑑賞だったりして、意味のない未鑑賞映画とは疎遠だった。
そんな時、ネットオークションで国内発売版のB級SF「金星人地球を侵略」(1956)のDVDを発見し廉価で入手。これがロジャー・コーマン作品だった。そこで久方振りに彼の名前を思い出して、大ハズレではないことを念じつつ到着。印象は超低予算ながら、流石のコ−マンと微笑んだばかりだった。
ここで扱っても良いかとも思ったのだが、未公開に近く写真転用ストックがないし、そこまで傑作でもない。
まあ、『下らん』作品ばかりと忌み嫌う映画ファンも多いだろうが、決して映画をバカにしているとか見下して作っているでもないのが伝わってきた監督。
例を挙げれば、随分と前にここで紹介した完全に「ナバロンの要塞」(1961)のパクリで、少人数で敵陣深く変装して入り込み活躍する「侵略戦線」(1964)などは大好きなB級作。何故なら特攻隊が全員犯罪者という設定は「特攻大作戦」(1967)よりも前なのだから。今後も折に触れ紹介していく予定。
兎に角、一切考えさせず映画は娯楽であり、またビジネスであると徹底した信念を感じた。個人的にはそれを通し続けたことは一縷の眼福でもあった。
合掌。