スタッフ
監督:テレンス・ヤング
製作:ユアン・ロイド
脚本:ジョー・アイシンガー
撮影:アンリ・アルカン
音楽:ジョルジュ・オーリック
キャスト
ジョーンズ / E・G・マーシャル
リンカーン / トレヴァー・ハワード
リンダ / アンジー・ディキンソン
サレム大佐 / ユル・ブリンナー
モニク / リタ・ヘイワース
マルコ / ギルバート・ローランド
バハー将軍 / ジャック・ホーキンス
ヴァンダービルト船長 / アンソニー・クェイル
モスカ警部 / マルチェロ・マストロヤンニ
日本公開: 1966年
製作国: アメリカ テルサン・ファンデ作品
配給: 松竹映配
あらすじとコメント
ユル・ブリンナーがカメオ出演的に登場する、麻薬密売ルートを追うオールスター・キャストのアクション・スリラー。
イラン、テヘラン
現地のサレム大佐(ユル・ブリンナー)を訪ねてきた国連のリンカーン(トレヴァー・ハワード)、アメリカ財務省出向のジョーンズ(E・G・マーシャル)たち。彼らは国境近くの遊牧民が秘密裏に栽培しているアヘンの諸情報を収集して一網打尽にする策を講じるためであった。
少し前にもアメリカの麻薬取締局員が潜入を試みたが失敗し、死体で発見される事件も起きていた。だが、それを辿り何とか遊牧民の一人の首領に行き着いた。ブツを押収し、放射性物質を少量沁み込ませ再度戻し、ガイガー探知機で追尾し密輸ルートを特定しようとする国連側。
その頃、殺害された取締局員の妻を名乗るリンダ(アンジー・ディッキンソン)が現れて・・・
麻薬精製と密売ルートを追う諜報員らの活躍を描く。
アメリカ単独の潜入捜査の失敗から国連での諜報活動にシフトし、イランでのアヘン栽培からどこへ密輸し麻薬へと精製されるのかを追跡調査する過程を描いていく作品。
本作は「007」シリーズの原作者イアン・フレミングによるスリラーの映画化であり、監督は初期の007を三本撮ったテレンス・ヤングを起用。しかもそれなりのオールスターを揃えている。
チョイ役ながらイギリスのヴェテラン勢の他に、ユル・ブリンナーにオマー・シャリフ、アメリカはリタ・ヘイワース、イタリアからもマルチェロ・マストロヤンニなど一応見応えはある布陣。
ストーリィは、今では不可能な『放射性物質』を染み込ませたアヘンをガイガー・カウンターで追うスタイル。相当な人間が被爆するぞと突っ込んではいけない。
しかし敢え無く失敗し所在不明になる。それもそのはず観客には説明されるが、砂漠地帯でヘリコプターに移し替え、貨物船でナポリに密入航させる方法であったから。何と砂漠各方面で待機中の捜査チームは誰も上を向いていなかったということでもある。
ナポリでは精製済の麻薬に変化しているので、今度は中毒にさせ寿命を短くしてまで貢献させるのはとても名誉の筈だと発言させての「麻薬犬」による捜査にシフトしていく。
現代では各方面からクレームが入る設定と内容で大真面目に進行していく。
特にメインの諜報活動をするのがイギリスの名優トレヴァー・ハワードとアメリカの名脇役E・G・マーシャル。どうにも両名ともアクション系俳優でもないし年齢的に無理がありそうだが、ジェームス・ボンド張りの活躍を見せて行く。
ある意味で、彼らの代表作なのかもしれない。しかもマーシャルにいたっては空手系アクションを披露するし、「十二人の怒れる男」(1957)では冷静沈着な陪審員第4号の証券マンを演じた俳優とは思えない起用法である。
しかも相手は「007ゴールドフィンガー」(1964)で印象に残る殺し屋を演じた日系のハロルド坂田だ。若干の感慨深さも喚起された。
一応、キャストそれぞれに登場時間の長短はあれど、見せ場を用意してバランスを取っているし、イラン、ナポリ、モンテカルロ、カンヌといった名所を見せてもくれるのでそれなりに楽しめる。
映画もそろそろ斜陽だなと自覚した映画人が、世界のスターを集めて質よりも量として世に送り出した大作系の一翼を担う作品でもある。
あくまでも、けなしている訳ではないが。