フォー・ザ・ボーイズ – FOR THE BOYS(1991)

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スタッフ
監督:マーク・ライデル
製作:ベット・ミドラー、B・ブラッカイマー、M・サウス
脚本:M・ブリックマン、N・ヒメネス、L・ローブ
撮影:スティーヴン・ゴールドブラット
音楽:デイヴ・グルーシン

キャスト
ディクシー / ベット・ミドラー
スパークス / ジェームス・カーン
シルヴァー / ジョージ・シーガル
シェパード / パトリック・オニール
シッフ / ノーマン・フェル
レオナール / クリストファー・ライデル
ブルックス / アイル・グロス
フィル / バッド・ヨーキン
ルアナ / ローズマリー・マーフィ

日本公開: 1992年
製作国: アメリカ オール・ガール・プロ作品
配給: 20世紀フォックス


あらすじとコメント

前回ではジャズ楽団のバンド・マスター、グレン・ミラーを連想させる役を演じたジェームス・カーン。今回も数度に渡る戦争の慰問を続けるボードビリアンを演じた作品にする。戦争と音楽という対比が面白い作品。

イギリス、ロンドン

第二次大戦下で米軍兵士への慰問を続けるボードビリアンのスパークス(ジェームス・カーン)。コンビで活躍していたが現在は独り興行。そんな彼に同行の脚本家シルヴァー(ジョージ・シーガル)が自分の従妹のディクシー(ベット・ミドラー)を新コンビの相手にどうかとアメリカから呼び付けた。

彼女の夫は戦場カメラマンで留守。ほぼシングル・マザーで4歳になる一人息子を抱えての来英でもあった。お気楽ボードビリアンは表面上で、実は気難しいスパークスは当然難癖をつけるが、舞台に上がると下ネタを上手く活用して兵士らから絶賛を浴びるディクシー。

そんな彼女に天賦の才能を感じて・・・

名コンビとして戦場への慰問を続けた男女を描く一代記。

女好きな超有名ボードビリアン。そこに決して美人ではないが才能に恵まれた女性歌手がやって来てコンビを組む。

たちまち大絶賛コンビとなりヨーロッパの戦場のあちらこちらに出向いて慰問を続ける。ある時はリーダーの心配りで数年会ってないヒロインの夫を呼び付けて感動の再会を演出したりする。

しかし当然、ワガママの極致の男でもある。戦場カメラマンの夫、小さな一人息子、となると以後の展開に大体の想像は付くだろうか。

そしてその通りの進行と展開なのだが、興味深いのは二人が離れたり再結成したりする切っ掛けすべてに戦争が関係していること。

第二次大戦、朝鮮戦争、そしてヴェトナム戦争。その間には脚本家の叔父の反政府発言から「共産主義者」と呼ばれ虐げられていくという脚本家ダルトン・トランボを連想させる『赤狩り』がでてきたりする。

しかも序盤の第二次大戦以降は、朝鮮、ヴェトナムともアメリカの負け戦である。その戦争の描き方が実に悲惨でアメリカ人の心の疲弊を重ねていくのである。

自由を勝ち取る大義名分がどんどん感じられない戦争へと変貌し、若い兵士たちの閉塞感と恐怖感を際立たせていく。一方で慰問を続ける主人公らの後方支援的『慰問団』という価値観の乖離が痛いほど浮かび上ってくる。

『大スター』はどの時代でも君臨できるし、どの戦場でも一応のアップデートはしつつも、現実とかけ離れて行く『イタさ』を描く。ある意味で老害と感じさせ、それらを相方のヒロインのみが被ることになり、結果、絶望と達観も上手く対比して描かれていく。

何といっても第二次大戦、朝鮮、ヴェトナムでの若き兵士たちの軍装の乱れや顔付きが激変していくのが底知れぬ恐怖感を与えてくる。時代での価値観の変化、一部政治家を含む確信犯的なビジネスとしての戦争誘導が臭い、何も知らぬ中流以下の若者たちが犠牲になる。

冒頭は老婆になったヒロインの回想から始まり、ラストへのつなぎ方など、中々見応えがある。

2時間半に迫る大作であり、戦争と音楽、枯渇感と恐怖感に苛まれる兵士らの若い美女への気色悪い程の興味などが臨場感たっぷりに描かれ、立派な反戦映画として成立している。

ある意味、とても残酷な映画であり力作。

余談雑談 2024年8月17日
パリでの大騒動が終わりTVも通常に戻った。 決まった時間に決まったプログラム。同時刻に登場する別なキャスターで曜日確認をする。確か海軍では曜日感覚を喚起させるために「金曜日はカレー」と決まっていたのと同じか。変わらないことの安定感。 進歩や