スタッフ
監督:ジャック・ベッケル
製作:セルジュ・シルベルマン
原作:ジョゼ・ジョヴァンニ
脚本:J・ベッケル、J・ジョヴァンニ、ジャン・オーレル
撮影:ギスラン・クロケ
キャスト
ダーバン / ジャン・ケロディ
ボレッリ / フィリップ・ルロワ
カシン / ミッシェル・コンスタンタン
ガスパール / マルク・ミシェル
モンセニュール / レイモン・ムーニエ
グリンヴァル看守長 / ジャン・ポール・コクラン
刑務所長 / アンドレ・ベルヴェル
ブブール / エディ・ラシミ
配管工 / ミック・ベッソン
日本公開: 1962年
製作: フランス フィルム・ソノール作品
配給: 東和
あらすじとコメント
囚人もの。今回も実話を元にした作品で内容は脱獄劇。実にクールでシャープな、いかにもフランス製の匂いが香り立つノワールの秀作。
フランス、パリ
サンテ刑務所のとある房に新入りのガスパール(マルク・ミシェル)が送られてきた。そこには既にダーバン(ジャン・ケロディ)、カシン(ミシェル・コンスタンタン)ら四人が収監されている。これ以上、狭くするなと看守に抗議するが受け入れられるはずもない。
当然、お互いに違和感が漂う。何やら既房の四人には隠し事があるらしく、いきなり新入りへの尋問が始まる。ガスパールは妻と夫婦喧嘩中に妻が持ちだした猟銃が暴発し妻が怪我をしたが、警察には夫側の故意だと言い張られ訴訟を起こされたと。
一応の同情を示す四人。しばらくしてスパイではなく仲間だと認識されると、実は脱獄計画があると打ち明けられて・・・
実話を元にした脱獄モノの秀作。
実刑確定ではなく裁判待ちの収監者たち。ただし、判決がでれば最低でも10年以上が確定の囚人ばかりである。そこに二枚目の優男が来るものだからスパイではないかと勘繰られる。
それでも新入りを信用し、かねてよりの脱獄計画を実行に移していく展開。
ただし、奇想天外とか突拍子もない計画ではなく単純に部屋の隅から穴を掘り、地下道にでるという実に地味で面白みはない計画ではある。
それを簡単な代用道具を作って地道に、後はどこか運任せにも似た計画。
こじんまりとした「大脱走」(1963)的にトンネルを堀り進めるのだが、本作の方が先に製作されている。
本作の妙味は実話に基づくものであり、原作者のジョゼ・ジョヴァンニと主演している囚人役のジャン・ケロディ両名は、その実際の脱獄計画に参加した元服役囚。
ゆえに、実にリアルで細かい描写に説得力があるので驚く。
まさに現実に服役し、計画に加担していなければ分からない刑務所内の描写や、トンネルの掘り進め方など見事である。
映画の「嘘」ではなく、説得力のあるリアリティこその緊張感とサスペンスの盛り上げ方が実にクールで、これぞノワール映画の醍醐味という作劇と進行。
原作者のジョヴァンニは撮影時もほぼ現場に常駐しアドヴァイスをしていたそうである。
そして主役のケロディも元犯罪者ゆえにいかにもの悪党面だし、どこか腹の座った重量感もある。
そういった様々なリアリティが、細かいカットやショット割りによって静かに、だが確実に盛り上がっていく。
終盤で描かれてくる一瞬の妙な解放感と、ラストでの急転直下の幕引きの落差も印象的な捨て難いノワールの逸品。
