スタッフ
監督:ミケランジェロ・アントニオ−ニ
製作:アマート・ペンナシリコ
脚本:M・アントニオーニ、T・グエッラ、E・バルドリーニ
撮影:アルド・スカヴァルダ
音楽:ジョヴァンニ・フスコ
キャスト
サンドロ / ガブリエーレ・フェルゼッティ
クラウディア / モニカ・ヴィッティ
アンナ / レア・マッサリ
ジュリア / ドミニク・ブランシャー
アンナの父親 / レンツォ・リッチ
グロリア / ドロシー・デ・ポリオート
レイモンド / レリオ・ルッタツィ
コラッド / ジェームス・アダムス
パトリツィア / エスメラルダ・ルスポリ
日本公開: 1962年
製作国: イタリア チーノ・デル・ルーカ作品
配給: イタリフィルム
あらすじとコメント
前回の「太陽はひとりぼっち」(1962)の監督ミケランジェロ・アントニオー二と主演女優モニカ・ヴィッティは名コンビである。今回もその二人が絡む不思議な作品。
イタリア、ローマ
大企業の社長令嬢アンナ(レア・マッサリ)には建築家の恋人サンドロ(ガブリエーレ・フェルゼッティ)がいるが倦怠期であった。
しかし原因は彼の方であり、様々なストレスから不安定さが重なったようだ。アンナの方もつられて情緒不安定気味だが、仲の良いクラウディア(モニカ・ヴィッティ)を含む数名の仲間たちとシチリア島近くのエオリア諸島にヨットで旅にでた。
当然サンドロも同行してくるが、それが妙に気に入らないアンナ。やがてとある無人の孤島に上陸すると突如、アンナが失踪して・・・
恋人の失踪後に繰り広げられる愛憎劇。
倦怠期のカップル。何とも情緒不安定でお互いが無意識に相手を傷付けている。
特に女性は自己中心的で女性の友人を広場に待たせてまで恋人とベッドに倒れ込むタイプ。
当然、その退廃的な身上は友人にも伝播していくと今度は逆にヒロインは冷めていく。どうにも身勝手で本能優先な人間たちとも受け取れる。
そんな連中が集う豪華ヨット旅行の途中でヒロインが突如行方不明になる。無人島ゆえ他島から警察を呼び、くまなく捜索するが完全消失状態。
恐らくは事故にしろ自殺にしろ死んだのだと結論付けて行く。
しかし、建築家の恋人と広場に独り残されて情事が終るのを待つほど鷹揚な女友だちが、失踪を受け入れられず、シチリア島での目撃情報から捜索を進めていく展開へとシフトしていく。
その過程で二人が新たなカップルとなっていくのだが、新ヒロインの方はやはり後ろ髪を引かれるので、当初は拒否し続けるが、結局、流されていく。
何を優先するとかではなく、けだるさと場当り的で、頭で考えるのでもなく流されていく風情でもる。
しかし、心のどこかで常に失踪中の友人が頭から離れない新ヒロイン。
何ともアンニュイで退廃的な描写と相まって空虚な心と寂寥感が付き纏い、何ともイヤらしい湿気に纏わり付かれながらの進行。
荒涼とした石ばかりの地域で心が乾燥していくのだが、皮膚には嫌な湿気が皮膚呼吸を妨げてくる妙な窒息感に陥らせる。
これも愛のカタチなのだろうが理解できるか否かは完全に別れようとも思う。
それは個人の貞操観念なり、価値観が大きく左右するだろうし、すべての登場人物たちが唾棄されるべきタイプと感じる人もいよう。
観念的な『愛』とは別に人間として、どうしても諦めきれぬ『性』への欲求。
素直に突き進むのか。躊躇いながらあきらめるのか。
どの道、何が正解かは個人の価値観でしかないと突き放すようで、逆に大きく包み込むような不思議な錯覚に陥らせてくる。
確かに愛は不毛だと感じさせる作品。
