わらの男  - L’ UOMO DI PAGLIA (1957年)

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スタッフ
監督:ピエトロ・ジェルミ
製作:フランコ・クリスタルディ
脚本:P・ジェルミ、A・ジャンネッティ 他
撮影:レオニーダ・バルボーニ
音楽:カルロ・ルスツケリ

キャスト
ザッカルディ / ピエトロ・ジェルミ
ルイーザ / ルイーザ・デッラ・ノーチェ
リタ / フランカ・ベットーヤ
コラモニーチ / サロ・ウルツィ
ジュリオ / エドアルド・ノヴェッラ
リタの母親 / ミリー
ファビアーニ / ルチアーノ・マルティン
リタの父親 / ロモロ・ジョルダーニ
フェストゥッチ / アンドレア・ファンタッィ

日本公開: 1959年
製作国: イタリア ルクス・フィルム作品
配給: イタリフィルム


あらすじとコメント

イタリア映画の名匠たちの作品を扱ってきたが、もう一人忘れてはならない監督を紹介する。ピエトロ・ジェルミである。監督と主演を兼ねる人物で市井の人間たちにのみスポット・ライトを当てるタイプ。

イタリア、ローマ

熟練工のザッカルディ(ピエトロ・ジェルミ)は妻ルザ(ルイザ・デラ。ノーチェ)と8歳になる一人息子ジュリオ(エドアルド・ネベラ)とつつましくも楽しく暮らしていた。

ザッカルディは仲間らと月に一回の狩猟会が楽しみで、息子もいつも同行していた。ところが途中で雨が降り息子が高熱をだして、挙句重症化してしまう。

妻に攻められ、退院後は息子のために妻の実家へ療養に行くことになった。ひとりのアパートは虚しく、日曜日に実家へ行くことが楽しみになるザッカルディは、実家近くの海で、同じアパートに住む22歳ながらどこか影を感じさせるリータ(フランカ・ベットーヤ)を見染て・・・

普通の中年男が陥る不倫の泥沼を静かに描くドラマ。

家族に恵まれ慎ましいながらも楽しく過ごす職工の主人公。

息子の療養先に出向いた先で若い女に惹かれ、帰路のバスが一緒なのを幸いに声を掛ける。

自分は知らなかったくせに息子から同じアパートの住人だと教えられ、且つ海辺で兵役中の恋人といるのを確認したにも関わらず。

イタリアに限らず、若干二枚目の中年男の密かな願望が開花し年長で妻帯者らしく一応、気を遣って接するが下心は丸見え。

相手は恋人と微妙な関係らしく心が不安定なので先行きは簡単に想像が付く22歳の小娘。

しかも元サッカー選手で現在は休職中の兄が自分の工場へ面接にきたものだから、裏から手を廻し就職させ彼女の家族をも取り込んでいこうとする。

果たして関係を持つと映画は主人公の妻への露呈の心配と若い娘ゆえの暴走傾向が顕著化という展開へ。

当然、焦る主人公であるが、自業自得だと思いつつ作劇が妙にしっくりとしていて、こちらの心がキリキリとしてくる。

市井の人間たちの等身大の心の機微を描いているのだが、誰もがそこいらに存在する人間たちであり特別感はない。

それが実に時にサスペンスを生み、厭世感や脆弱性を浮き彫りにしていき、もしかして最悪の方へ暴走して行かないだろうかと真綿で首を絞めつけられていく感覚に陥った。

こうなればジェルミ監督の術中に嵌ったということだろう。

所詮、格好は付けても身勝手な男の所業はロクな結果を生まないし、母性を持つ女性にはどうあがいても敵わないと痛感させられる。

ありがちのベタベタ系の不倫ドラマではあるが、妙に落ち着いた雰囲気が漂うのは均衡の取れたチーム・ワークの賜物だろう。

余談雑談 2025年10月11日
今回も沖縄話。コザで友人と再会し旧交を温めたり、コザ騒動の映画を観たり。他にはTV番組で見て強い印象を受けた平和祈念館内にある資料館を訪問した。今回は戦後80年の節目からか、何とも戦争や騒動に興味が傾いた旅であった。目的の場所は那覇から南部...