裂けた鉤十字/ローマの最も長い一日(未)  - RAPPRESAGLIA (1973年)

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スタッフ
監督:ジョルジ・パン・コスマトス
製作:カルロ・ポンティ
脚本:ロバート・カッツ、G・P・コスマトス
撮影:マルチェロ・ガッティ
音楽:エンニオ・モリコーネ

キャスト
カプラー中佐 / リチャード・バートン
アントネッリ神父 / マルチェロ・マストロヤンニ
メッツラー司令官 / レオ・マッカーン
ドルフマン大佐 / ジョン・スタイナー
ドミズラフ少佐 / アンソニー・スティール
パンクラツィオ教区長 / ロバート・ハリス
カルーソ刑事部長 / レンツォ・モンタニャーニ
パオロ / ジャンカルロ・プレーテ
エレーナ / デリア・ボッカルド

日本公開: 未公開
製作国: 伊、仏 シャンピオン、ル・コンコルディア作品
配給: なし


あらすじとコメント

戦時下のイタリアが舞台の作品。実話に材を得た過剰な報復を巡る男たちを描いた残酷なる人間ドラマ。

イタリア、ローマ

第二次大戦後期、ドイツの傀儡政権となったイタリア。統率不可に陥ったイタリア軍に代わりドイツ軍が駐留統括していた。

当然、それに反発する抵抗勢力が発生。それに対し毎日威圧的に行進するナチスの分隊。ある日、その分隊に対しパルチザンによる攻撃がなされ30名近い兵士が犠牲になってしまう。ドイツ側は激怒しローマの統括司令官はカプラー中佐(リチャード・バートン)に報復を命令。しかし、カプラーは更なる反発、否やローマ市民全体の蜂起をも誘発しかねないと進言。

それでも司令官はドイツ本国に強硬なる指示を仰ぎ、ヒトラーが承認。ただちにドイツ兵一名に対し十名のイタリア人を殺せと。

それを知ったケプラーと旧知のアントネッリ神父(マルチェロ・マストロヤンニ)は・・・

実話を散りばめた社会派的戦争告発映画。

抵抗組織により襲撃され本来同盟国であるドイツ側に戦死者がでる。司令官は激怒し感情的に命令を下そうとする。

それに異を唱えるが知性派ナチス将校。これは実在の人物でムッソリーニ救出作戦に加担したが、本作での内容を遂行した罪状で終身刑の判決を受けた人物。

方やイタリアの神父は想像上の人物だがモデルになったのが二人いるといわれている。

本作の主役はこの二人。互いにどこか認め合っているが、所詮、上の命令には従わざるを得ない立場。

激高型司令官とヒトラーは似たり寄ったりという性格だが、一部には理性的な高官も登場はしてくる。

一方でバチカンの法王はドイツに対し正論すら言えないという設定。つまり、誰も責任を取りたくないが、見せしめは必要であり、主従関係の中で苦悩するのは中間管理職という構図。

ナチス役のバートンも神父役のマストロヤンニも力演である。設定は連合軍がイタリア本土に上陸した後で、バートンは強行すればローマ中が蜂起するかもと脅したりするが、逆に処刑人リスト提出を命令される。

それにはローマ県警の協力も必要だが当然、イタリア側は国民を差しだしたくはない。

そこで折衷案として死刑囚や政治犯で対応しようとするが絶対数が足りず、結局ユダヤ系家族にまで触手を伸ばし人数の辻褄合わせをする。

それを苦悩しつつ人選するバートンと阻止に動くマストロヤンニが描かれるが、結果は歴史が証明している。

設定と進行は中々妙味がある、しかし、終盤で描かれる洞窟での凄惨場面は直接的ではなく敢えてばらつきのあるショットや編集で繋ぎ、興を削いでいると感じるが、それも敢えてのことだろうと感じた。

何故なら衝撃的なラストシーンを迎えるためのミスリードとしての演出であったから。

史実にかなり加筆し変更しているようだし、一応、劇映画としては成立しているが告発系ドラマとしては弱い印象が勝る。

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