スタッフ
監督: ディーノ・リージ
製作: マルチェロ・ジロージ
脚本: エットーレ・M・マルガドンナ
撮影: ジュゼッペ・ロットゥンノ
音楽: アレッサンドロ・チコニーニ
キャスト
ソフィア / ソフィア・ローレン
カーロテヌート / ヴィットリオ・デ・シーカ
ヴィオランテ / レア・パドヴァーニ
ニコリーノ / アントニオ・チファリエッロ
カルメーラ / ティーナ・ピーカ
ドン・マッティオ / マリオ・カロテヌート
スウェーデン娘 / イョーカ・ベレッティー
ドン・エミーディオ / ヴィルジリオ・リエント
ソレント知事 / アントニオ・ラ・ライーナ
日本公開: 1963年
製作国: イタリア チタヌス作品
配給: 大映
あらすじとコメント
ヴィットリオ・デ・シーカとソフィア・ローレン。ただし、今回デ・シーカは監督としてではなく、役者としてのみ登場している、いかにものイタリア喜劇。
イタリア、ソレント。騎馬警官を30年も務めていたカーロテヌート(ヴィットリオ・デ・シーカ)が、生まれ故郷に戻ってきた。地元の警察署長のポストが空いたからである。
彼は頭こそ白いものが目立つが、独身にして現役バリバリの男だった。だが、友人に紹介された家に行くと、何と未亡人になったばかりのソフィア(ソフィア・ローレン)が、駄々をこねて居座っていた。
このまま居座られては大変だとばかり、カーロテヌートは何とか彼女を追いだそうとするが、ソフィアは『男殺し』の異名を取るグラマーだったことから・・・
風光明媚な場所で繰広げられる大らかなコメディ作。
監督として佳作、秀作を送りだしたヴィットリオ・デ・シーカ。彼は中々の二枚目で、立派に喜劇役者としても不動の地位を築いていた。
マストロヤンニよりも逞しく、それでいて、スケベさが漂う典型的なラテン男という風情。
本作もその特性が遺憾なく発揮されている。
実は、本作はデ・シーカ出演で製作された「パンと恋と」シリーズ三本目である。前の二本は、共演がジーナ・ロロブリジーダだった。
そのどれもが『警察署長』役であり、そんな彼が赴任先で色恋沙汰から恋の仲立ちまでするというコメディのシリーズ。
個人的には、主人公がそこそこの権力者であり、スケベで、結局、女性に翻弄されるという点で、どこか、日本の森繁久弥が主演した「社長」シリーズに似ていると感じている。ただし、大傑作もない、というのも共通項であるのだが。
本作は、どちらかというとこじんまりとした展開で、牧歌的という印象。
よく言えば『大らか』であり、別な言い方をすると『大雑把』。
ただ、それこそがイタリア製喜劇の真骨頂であろうか。バタ臭さもあり、どうしても日本人には馴染めない感覚でもあろう。
やはり『喜劇映画』というのは、そのお国柄がかなり反映され、その国民はツボに嵌るが、外国人からすれば、どうしてもピンと来ないものが多いと感じている。
本作も然りである。スケベ心がありながら、公僕という立場が邪魔をする。その上、本人はスマートだと思っているが、かなりバタ臭い。
お人好しの友人や、長年雇っている老女中や、ヒロインに恋心を持つ若者といったサブキャラの設定も、どうもしっくりと来ない。
だが、そののんびりとした展開が、「帰れソレントへ」で有名なティレニア海に面した風向明媚な観光地で起き、観る側は、妙な郷愁を誘われ、そして、のどかにバカンスを過す場所というイメージに合致したリズム感に酔える。
この点では、日本の「社長」シリーズではなく、「男はつらいよ」に繋がるものがあると感じる。
いかにもの時代性を感じるし、笑いのツボも全然違う。だが、これがラテン系のイタリア人の好む作風かと思えば、それなりに国民性が理解できるであろう、好材料の映画でもある。