いよいよ春らしい。明日、三月五日は二十四節気の『啓蟄』。虫が冬眠から覚め動き出す時期とか。
だが、誰でも思うだろうが、何も冬眠から覚めるのは虫だけではない。では、一体何を指すのか。
まあ、難しく考えるまでもなく、そろそろ活動期に入りましょうという、人間に対する鼓舞だろう。
でも、考えてみると「虫」が付く漢字には、ヘビ「蛇」、かえる「蛙」から、ハマグリ「蛤」、シジミ「蜆」、たこ「蛸」、エビ「蝦」など海の生物まで虫偏が付くのも不思議。
かといって全部、食べられるものとしての統一でもないんだよな。
何とも不思議に感じるところだが、独特の発想なりがあったのだろうか。他にも、緑を青と呼ぶのも、日本人特有の感性だからか。
その青にしても、藍、紺など同系ながら、ちゃんと違う色と認識しているので語彙数が少なかったわけでもなかろうし。
でも、今だって信号は「青信号」。刷り込みというか、幼少期に教わって以降、何の躊躇いなしに、信号は「青」と使ってきた。
そんな自分が、冷や汗をかいたことが大学時代にあった。万事に大らかというか、テキトーなイタリア人の友人が初来日したとき、あちらでの無謀な交通マナーに閉口したこともあり、歩行者信号を指さし、日本人はルールを守るから、信号が青になってから渡ると説明したら驚かれたのだ。
生真面目すぎると返されると思ったが、お前にはあれがブルーに見えるのか、と。苦い思い出ではあるが、確かに「青」を英訳しようと脳内変換したら「グリーン」とは浮かばない。
まったくもって外国語は苦手だ。そもそも「虫」が付く漢字だって、中国語からきているのだが、昔の人は生き物総体を虫と考えたのか。
そう考えると人間だって虫なのだろう。「虫歯」「腹の虫」やら、「虫唾が走る」とか、あまり良いイメージの言葉が浮かばないのは自分の性格だよな。
そんなことばかり考えているから、苦虫を噛み潰したような顔だと言われるのか。
かといって、無理に笑顔を作っても、変質者に間違われるのがオチだろうけど。ならば、へそ曲がりとしては、今から冬眠に入るかな。