また、お気に入りの店が閉店した。月に一度、整体を受けるために国技館のある「両国」に行っている。
元々は飯田橋にあったが、再開発で移転した治療院だ。自室に、より近くなったのだが、交通の便が悪く、結局、徒歩で通うことにした。
しかも、忙しい方で、完全予約制であり、自分はいつも月末近くの週末の朝10時という時間である。となると、近くで早目のランチが流れとなったが、中々、気に行った店が見つけられずにいた。
そんな中で発見した「とんかつ屋」。一年近くは、店頭で山積みの弁当を販売しているので、敬遠していた。
だが、他にめぼしい店を発見できず、二年ほど前に入ってみた。老職人がカツを揚げ、60代以上の女性が4名ほどスタッフで働く店で、入口は狭くカウンターのみだが、鉤の手型で奥が広く50人は入れる店。
想像以上に美味で、以後、毎月施術後はその店と決めた。もっと早く入れば良かったと後悔もしたほど。
ところが、春過ぎから母の具合が芳しくなく、自分がタバコ屋の店番を一日中することになった。
となれば、所用で外出するのは少なくしなければならず、それこそ外せないこと以外はあきらめた。
でもって、整体は続けたいので、別に月イチの要件をその日に合わせ、店はそれらが終わり次第に戻って営業とした。
別件は、水道橋でそちらは毎回、昼の12時からの予約に。ご存知の方もおられようが、水道橋から隣の神保町はランチの黄金地帯でもある。
ところが、好きだった学生相手の安くて旨い店は、ほぼ閉店しており、カレー激戦区になってしまっていて、逆に、あきらめも付いていた。
そんな中、新たに古臭そうな店を発見し、翌月はとんかつ屋をあきらめ、そちらに行くことにした。
たった一度のパスだった。そして翌月、いつものように行ったら突然、閉店していた。
茫然自失である。好きな店は閉店するジンクスが再来。
まあ、当たり前か。古くから存続し、店の方々は老齢。故に安くて、ヴェテランの味がする。
世のスピードは加速し、次々と栄枯盛衰を繰り返す。江戸前の男だが、「新しもの好き」ではなく、老舗ではない、気張らない飲食店が好き。
外観も一般受けする魅力もなく佇んでいるというか、ただ存在し続けている店。そういう店を自分の嗅覚で発見し、悦に入るのが愉しみ。
しかし、だからこそ、好きな店はなくなっていく。
確かに、実家の近所で新発見した店もあるので、寂しさばかりじゃない。
それでも、自分の人生だって、そろそろ先が見えてくるのかなと心細くはなるんだよな。