スタッフ
監督:ラッセル・ラウズ
製作:クラレンス・グリーン
脚本:フランク・D・ギルロイ、ラッセル・ラウズ
撮影:ジョージ・J・フォルシー
音楽:アンドレ・プレヴィン
キャスト
テンプル / グレン・フォード
ドーラ / ジーン・クレイン
ハロルド / ブロデリック・クロフォード
ドゥーリトル / ラス・タンブリン
マックスウェル / アリン・ジョスリン
グローヴァ- / リーフ・エリクソン
スォープ / ジョン・デェナー
ウェルズ / ノア・ベリー Jr
マクガヴァン / J・M・ケリガン
日本公開: 1956年
製作国: アメリカ MGM作品
配給: MGM
あらすじとコメント
前回の「廃墟の守備隊」(1952)でタフで頼りになるヴェテラン軍曹を演じたブロデリック・クロフォード。今回は正反対の役柄を演じた西部劇の佳作を紹介したい。
アメリカ、テキサスとある町にやって来た三人の怪しげな男たち。リーダーはハロルド(ブロデリック・クロフォード)で、いきなり早撃ちの名手と呼ばれる男を探し始めた。
それを聞いて一人の男が店からでてくる。初見ゆえ不思議そうな顔をする名人。この世で一番の早撃ちが自分であることを証明するために勝負をしろと告げるハロルド。挑戦される人生に疲れたから勝負などしたくないと言うが、一歩も引かない。あきらめた名人が銃に手をかけた。そして、一瞬で勝負が着いた。
その現場を見た男たちが、離れた小さな町にやって来て、事の次第を揚々と話しだした。その話を嫌な顔をして聞くテンプル(グレン・フォード)。彼は妊娠中の妻と雑貨店を営む男だが、拳銃を携帯せず、物静かで、町の男たちからは腰抜けと思われていた。だが、どこか謎めいており、最近は妙にイライラしている模様でもある。
そんな彼の姿に不安を感じた妻のドーラ(ジーン・クレイン)は・・・
謎めいた男の真の姿を描く、実に意匠の凝った西部劇の佳作。
自分こそ全米一の早撃ち名人だと信じるために、次々と相手を探し、倒してきた無法者と二人の仲間。
一方は、4年前から小さな町に夫婦で移住してきた謎めいた男。
当然、その謎めいた主人公が、どういう男で、どのような過去があるのかというミステリー仕立てでもあるが、恐らくラストは縁もゆかりもない二人が対決するのだろうなと容易に想像が付くだろう。
では、その過程を描くために、どのような進行をみせるのか。単純なのか、さもなくば、どの程度の「ひねり」があるのか。
断言するが、本作は時代性を加味すると、かなり意匠の凝った作劇であることは間違いない。
その上、今現在に観てみると、本作が以後の西部劇に限らず、サスペンス部分などを含めて、かなり様々な作品群に影響を与えていることが理解できよう。
ありがちな設定から、徐々に謎が解けて行き、更に観る側の好奇心を刺激し、次の一手を想像させる進行。
主人公の思わぬ行動から町民が唖然とし、それから彼を取り巻く環境が目まぐるしく変化していく。
「寛容」と「許容」。しかし、それすら、また坂を転げ落ちるように変化していく。
市井の人間の残酷性。一方の悪漢三人組も、主従関係による結束力があるのかないのか、ぼかすのだ。
後半は、次々と変化を見せつつも、劇的な盛り上げ方をしない進行。
好漢、悪役双方を演じてきたグレン・フォードの微妙な演技が想像力を加速させ、悪役であるブロデリック・クロフォードの強いのか弱いのか解らない、どこか、お互いが上手いのか下手な役者なのかを曖昧にし、何ともスムーズな映画的進行の均衡を妨げる。
ところが、そんなアンサンブル的演技の対比が、実に不安定さと心地良さを絶妙なリズム感で醸しながら、こちらに迫ってくる。
知名度が低いラッセル・ラウス監督だが、かなりのしたたかさと力量を持った男であると理解できよう。
所詮、当時の王道でもあり、粗製乱造で食傷気味な西部劇だろうと多寡を括っていると、いやはやと玄人をも唸らせる、中々どうして、捨て難い佳作である。


