石垣島と那覇の旅。幻の泡盛を買えず、豚足おでん屋ではママさんとロクに会話も出来なかった石垣島の初日。
翌朝、相変わらずの晴天の元、予約した「波照間島」行きの船に乗るべく、離島ターミナルへ意気揚々と向かった。
カウンターに行くと、一便目は出航だが、二便目以降は『未定』の表示。受付の女性に尋くと「台風が遠いながらも近付いているので、未定であり、昨日は問題なかったんですがね」と来やがった。
もし、帰れないと大問題だ。まして台風は近付く方向でもある。一瞬にして波照間島の夢は潰えた。ならば、別な島だ。
そんなこともあろうかと予想し、目星を付けておいた場所がある。ハート・アイランドと呼ばれる「黒島」だ。
何もない島で、レンタサイクルで一周するしかない。そこは内海にあり、問題なく就航中。ならば、と即時決定。
ただ、1時間以上も間が開いた。相変わらずの晴天だが、仕方なく、時間を潰そうとターミナル内を見て回ることにした。
片側は、定期船運行会社や旅行社があり、反対側は窓がズラッと並び、船着場が見えて旅情を掻き立てる。両サイドには、水着や弁当などを売る店に、小さな飲食店という作り。
その中のひとつに、前面は土産屋だが、奥に泡盛を売るブースがあった。どうやら酒屋が出店しているらしく、何を飲んでも一杯600円と謳っている。流石に朝から泡盛はな、と思いつつ覗くと驚いた。
探し求めていた、泡盛の一升瓶が一本鎮座しているではないか。迷うことなく、それをカウンターに持ち込み、全額先払いするから6本入荷したら宅急便で東京まで送っては貰えぬかと依頼。何せ、一升瓶が1500円だが、送料が離島扱いで高く、6本までは同額だから。
家族経営だが、実際はおじさんが独りで仕込む酒造所ゆえ、受注生産のみで大量には作れないんですよね。酒屋の男性はこちらの依頼に驚きながらもそう説明してくれた。先刻承知の上で、待ちますと。
お時間は頂くかもと返答してきたが、笑顔で頷いた。急転直下、波照間島はダメだったが嬉しくて飛び上がりそうだった。
高揚して黒島行きの船へ。ところが思いの外、混んでいた。自分同様、波照間島をあきらめた観光客だろうか。
30分程度で到着すると、一斉にレンタルサイクル屋に殺到。自分の二人前で在庫切れと返答。この先にもう一軒あるからと言われ、すぐさま向かう。
1時間200円と、都内のコインパーキング並みの料金で3時間でレンタル。
人口の少ない島で、メインは黒毛和牛の生産。日本のその種は、ほぼこの島から出荷され、様々な種と掛け合わされ、有名牛になるらしい。
それ以外は、本州よりは小ぶりのカラスばかり。なるほど、黒島かと。
1時間もかからずに一周。人の気のない海岸に出て、足首まで入ったが、やはり暖かい。天気が急変しそうなので、早目に戻り、一軒しかないカフェへ。
すると近付くなオーラを発する若い独り旅女性が入店してきた。あれ、と思った。昨日、豚足おでん屋「めんがてー」にいた女性ではないか。
やはり、誰とも目を合わさずスマホなどを見ている。向こうもこちらに気付いたのか、完全に避けるような態度である。
そりゃ、そうだよな。強面のオジサンと二日続けて会ったら、怖いだろうな。まさか、映画でもあるまいし、これは運命とか笑顔で話し掛けてくれるわけもなしだよな。
予定の船で石垣に戻り、一応、念の為に、波照間島行を見ると「運行中」の表示。
ああ、見なけりゃ良かったな。それでも、楽しい旅だよな。何たって、翌日には酒屋から連絡が入り、6本かき集めたと。
これじゃ帰る前に到着しそうだな。でも、これだから沖縄は好きなんだよな。