わが青春のマリアンヌ – MARIANNE DE MA JEUNESSE(1955年)

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スタッフ
監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ
原作:ペーター・フォン・メデルスゾーン
脚本:ジュリアン・デュヴィヴィエ
撮影:レオンス・アンリ・ビュレル
音楽:ジャック・イベール

キャスト
マリアンヌ / マリアンヌ・ホルト
リーゼ / イサベル・ピア
ヴィンセント / ピエール・ヴァネック
マンフレード / ジル・ヴィダル
ジャン / クロード・アルゴン
大尉 / ジャン・ギャラン
フェリックス / ミハエル・アンデ
トビー / セルジュ・デルマス
教授 / フリードリッヒ・ドミン

日本公開: 1956年
製作国: フランス フィルムソノール作品
配給: 東和

フランス映画界のジュリアン・デュヴィヴィエという監督。様々なジャンルの作品を発表しているが、本作は青春時代の恋愛への強い思い込みを耽美的、且つ、神秘的に描いた作品。

オーストリア、バヴァリア地方湖畔に建つ寄宿学校には、最年長のマンフレート(ジル・ヴィダル)を筆頭に多くの学生がいた。そこにアルゼンチンからやって来たヴィンセント(ピエール・ヴァネック)が転入してきた。すぐに話しかけたマンフレートに、友達になれそうだねと笑うヴィンセント。

だが、そこには五人の悪ガキグループもいる。彼らは自らを『秘密冒険団』と呼び、様々な遊びをしているが、次の目標は湖畔の反対側に建つ謎の古城探検であった。そこは幽霊屋敷で、昼間でも窓を一切、開けずに人の気配もないと。だが、一説によると鬼のような老人がおり、来るものを殺害するらしい、と。そういう噂話で盛り上がり、肝試し的に行こうとする。

そんな五人組は、ヴィンセントが動物と会話し、霊を感じ取ることも出来ると聞き、仲間に引き入れる。六人は早速ボートで出掛けるが、新参者のヴィンセントにボートでの見張り番を命じ、五人だけで湖上に向かった。

だが、一向に戻らない彼らに業を煮やした彼は・・・

少年らの青春模様をリリシズムに満ちたタッチで綴る作品。

探検と称し、謎の古城に行った青年が、仲間とはぐれ、偶然、そこに幽閉されている美女に一目惚れして起きる幻想的な出来事を追う作品。

思春期特有の感情。しかも、自分らは家族に見棄てられて入校させられていると思っている少年たちだ。

そこにアルゼンチンから来たという青年が登場し、俄かに違う影響が出始める。

その青年は学校近くに住む鹿を手懐けたり、謎の古城の番犬に好かれたりと、特殊な才能がある。寄宿舎にいるたった一人の少女は彼に思慕の念を抱き、積極的に接してくる。

だが、その青年は幽閉中の美女に恋しており、その美女が本当に存在するのかと学校内でも評判になる。

そうなると彼に恋する少女は嫉妬から恐ろしいことを考えだす。

恋愛という「熱病」に罹った青年を中心に悪ガキ五人組や、頼りになる兄貴分と主人公を慕う年少の少年などが閉ざされた中、暇を持て余す思春期の少年たち特有の妬みや劣等感を掻き立てて行くのである。

美女は本当に存在するのか。そして、何故、彼女は幽閉され、一歩も外へ出ることを許されぬのか。

では、一体、誰がそんな仕打ちをしているのか。

ミステリアスで幻想的な内容でもあり、思春期こその成長しきれていない人間たちの身勝手さが面倒を加速させていく。

彼らの心を象徴するかのように登場する激しい風雨の場面や、主人公と心が通じ合っていると思わせる動物たちのシーンなど、ロマンティシズムとリリシズムに溢れる表現。

また、同性愛的傾向も匂い立ち、エロティシズムをも漂わす。

いかにものフランス映画なのであるが、本作は、フランス版とドイツ版が並行して撮影され、仏独二組のキャストにより、同じ場面が撮影されるという変わった意匠で制作された。

日本ではフランス版のみが公開された。故に、フランス映画なのに、一種独特な雰囲気を醸しだしている。

主役二人以外は全く違うキャストらしいので、どのように印象が変わるかドイツ版も見てみたい。

どの道、幻想的で残酷な思春期を描いた作品であることには違いなかろうが。