旅 – THE JOURNEY(1958年)

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スタッフ
監督:アナトール・リトヴァク
製作:アナトール・リトヴァク
脚本:ジョージ・タボリ
撮影:ジャック・ヒルドヤード
音楽:ジョルジュ・オーリック

キャスト
ダイアナ / デボラ・カー
スーロフ少佐 / ユル・ブリンナ─
フレミング / ジェーソン・ロバーズ
リーネランダー / E・G・マーシャル
デヴリル / ロバート・モーレイ
マギー / アン・ジャクソン
ビリー / ロン・ハワード
エヴァ / アヌーク・エーメ
ミツ / ジェリー・藤川

日本公開: 1959年
製作国: アメリカ A・リトヴァク・プロ作品
配給: MGM

あらすじとコメント

ロシア出身の監督アナトール・リトヴァク。今回はソ連支配下の地で西側民間人たちが半監禁状態になるサスペンスタッチのメロドラマ。

ハンガリー、ブダペスト

西欧へ向かう最後の民間機がソ連軍の命令により足止め状態に入って二日目。空港内には出発を待つイギリス人記者やアメリカの技師リーネランダー(E・G・マーシャル)と家族、日本人商社マンなど十数名がいた。その中に夫婦のようにも見えるが、どこか謎めいたダイアナ(デボラ・カー)とフレミング(ジェーソン・ロバーズ)の姿もあった。

結局、ソ連軍はフライトをキャンセルさせバスによる移動を発令して国境に向かわせた。しかし、内乱状態のハンガリーで反政府活動の関係者がいると一行全体にもスパイ容疑がかかるという心配事も含んでいる。なぜなら、イギリス人を名乗るフレミングが何らかの問題を抱えているようだからである。

一行が国境近くの町に着くと、その地の警備隊長スーロフ少佐(ユル・ブリンナー)がやって来て、全員の越境許可証は無効になっていると告げてきた・・・

内乱下の地で翻弄される東西の人間たちを描くスリラー系ドラマ。

足止めを喰らっている西側民間人は日本人を含む、ドイツ、イタリア、フランス、イギリスと実に雑多。当然、小さな子供や若い娘も混在する。

その中に相当な怪我を隠している革命分子らしき男が紛れ込んでいる。しかも、フォローするのは美形イギリス女性。二人の関係性も謎であるし、ソ連軍の国境警備隊長も理解があるのか、反乱分子をあぶり出す罠を仕掛けているのか謎。

その上、町にはレジスタンス活動の若き男女たちもいて銃撃戦まで起きる場所。そこでも、更なる足止めを喰らう一行。

内容としては、巻き込まれ型一般人らが冷戦下の異国で受ける残酷さを描いているが、やはり西側からの視点だと感じた。

「旅」というタイトルなので空港からのバス移動や、国境の町での徘徊などもあるが、全体的としては密室会話劇ドラマの印象が強い。それでも出演陣は地味な脇役専門が多いが、それぞれの個性が生きていて見せ場も多かれ少なかれ描かれるので好印象だし、ラストもある意味、衝撃的ではあるが納得もできる。ただし、嫌味が勝るが。

一行の中にも裏切ろうとする者、秘密を黙認し通す者と様々だが東西双方に解りやすい、いかにもの悪役が存在しない。もしかしてロシア系であるリトヴァク監督の爪先立ちの矜持であろうかとも感じた。

主演であるブリンナーとデボラ・カーのコンビは「王様と私」(1956)の方が圧倒的に有名だろうが、まったく違う印象を与えて両名とも中々の名演といえるだろう。

脇役専門ながら英国系ロバート・モーレイ、アメリカ人俳優E・G・マーシャル、「男と女」(1966)の主演女優アヌーク・エーメなど、印象深い役柄を演じる俳優陣の起用も滋味がある。

その中でも、大の御贔屓俳優ジェイソン・ロバーズの本邦初お目見えの存在感が際立つ。主演二人のためのオイシイ場面をメインに設定進行していくが、ロバーズの一人芝居も逸材の片鱗を覗かせて微笑んでしまった。

有名作でないものの、捨て難い作品。

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