スタッフ
監督:ロイ・ボールディング
製作:ハリー・タトルマン
脚本:ダドリー・ニコルス、ロイ・ボールディング
撮影:ジョセフ・ラシェル
音楽:フレデリック・スタイナー
キャスト
ラティマー / リチャード・ウィドマーク
キャサリン / ジェーン・グリア
ブラウン / トレヴァー・ハワード
アンダース博士 / ペーター・ヴァン・アイク
フェルナンデス / ファン・ガルシア
ファン / カルロス・ヘニングス
ペドロ / ホセ・チャベス
アントニオ / トニー・カバシャル
パコ / ギレルモ・カレス
日本公開: 1956年
製作国: アメリカ ラス、フィールド作品
配給: ユナイト、松竹
あらすじとコメント
メキシコに越境して騒動を起こすアメリカ人。今回も小型飛行機が絡む現代劇で、原因の張本人は女性。ある意味、巻き込まれ型で、中々良く出来たアクション。
メキシコ、サン・マルコス
雑誌記者キャサリン(ジェーン・グリア)が、ニュー・ヨークから遥々飛行機を乗り継ぎやって来た。飛行場から更に先の小さな港町に、筆を折って消息を絶った人気作家ラティマー(リチャード・ウィドマーク)が逗留中との噂を聞きつけたからだ。彼女は何故、彼が突如引退し隠遁生活を送るようになったかという真相を探りに来たのだ。
やっと着いた先は観光客も滅多にやってこない辺鄙なところだったが、難なくラティマーを発見した。素知らぬ振りして近付くキャサリンだったが、酒に酔ったラティマーから真相を聞き、いたたまれなくなる。今度は逆に同情され、彼の小型機でアカプルコまで送ると言われた。
辺鄙過ぎる場所であり、彼の厚意に甘えるしかない。ところが、その機の方位磁石の不具合から方角を間違え、密林に不時着してしまう。
機は大破するものの命に別条がない二人。そこにイギリス人のブラウン(トレヴァー・ハワード)らが救助に来てくれたが・・・
アメリカ人二名がメキシコ奥地で巻き込まれる恐怖体験を描くアクション。
突然姿を消した有名作家。戦争特派員、内戦参加、アフリカへ猛獣狩りにまで行った男。
モデルは完全にヘミングウェイである。しかも、現在は釣りと酒三昧。そんな作家と飛行中、女性記者が磁石付き手帳を何気なく方位磁石近くに置いたことから誤作動。結果、目的地方面を間違え燃料切れで不時着。
すぐにイギリス人とアムステルダム大学の考古学者を名乗る白人に救出されるが、どうにも胡散臭い連中。しかも獰猛なドーベルマンを4頭も飼っている。辺鄙なジャングルの奥で、一体何をしているのだろうか。主人公らが乗っていた飛行機は跡形もなく消え去り、素知らぬ振りをする。まるで何事も起きなかったようなスタンスだ。こうなれば完全に訳アリな人間たちだと理解できよう。
そんな中、主人公がリーダーと思しきイギリス人の声に聞き覚えがあり彼らの素性を確信するが、当然、逆に元作家の性格上、挑発的な言動を取るから命の危険に晒されることになる。
かくして脱出を試みるが、おおよその不時着位置から東海岸へ向かうのが得策だろうと推理する主人公。そして、タイトルのように太陽に向って走れと相成るのだ。相手は情け容赦のない連中で、追跡の先導は獰猛な猟犬ドーベルマンである。
主人公とヒロインは武器はナタが一丁とお守り代わりのライフルの弾丸が一発のみ。当然、ライフルの持ち合わせはない。
このような状況でいかにして執拗に追ってくる連中から逃げ切るのかというサスペンスとアクションが連続していく。
派手さはないが、運頼みとはいえ知恵比べ的攻防戦やら妙味ある筋運びで飽きさせない。監督はイギリス映画が多いロイ・ボールティング。核廃絶のために自家製小型原爆を所持し、一週間後にロンドンで爆発させると政府と世界を脅迫する老物理学者を描いた静かな傑作「戦慄の七日間」(1950)を輩出した御仁である。
派手さより堅実さで描く手法を得意としたが、本作以降は失速した感がある。
出演陣はヒロインが弱いのが気になるが、ヘミングウェイとは全く似つかわしくないが、独特のセンスと定評ある抑えた演技のリチャード・ウィドマークに、イギリスの名優トレヴァー・ハワードの冷たく底光りのする演技も捨て難い。
結果、トータルとしてよくまとまったアクション活劇で推奨できる作品である。